内容説明
日本仏教で最も多くの信徒を持つ浄土教の根本経典、『阿弥陀経』『大無量寿経』『観無量寿経』のあわゆる浄土三部経をはじめ、菩薩行を強調し華厳宗のもととなった『華厳経』、禅宗に多大な影響を与えた『楞伽経』、護国経典として名高い『金光明経』、真言密教の真髄『理趣経』など、東アジアの仏教に重要な影響を及ぼした多彩な大乗仏典を解説する。代表的な仏典を講義形式で読み解く「お経」入門シリーズ、ここに完結!
目次
第19回 極楽浄土を欣求する―『阿弥陀経』
第20回 浄土建立の誓願―『大無量寿経』
第21回 浄土の観想―『観無量寿経』
第22回 菩薩行の強調―『華厳経』(1)
第23回 善財童子の求道―『華厳経』(2)
第24回 唯心の実践―『楞伽経』
第25回 正法もて国を護る―『金光明経』
第26回 真言密教の奥義―『理趣経』
著者等紹介
中村元[ナカムラハジメ]
1912‐99年。東京帝国大学文学部印度哲学梵文学科卒業。東京大学名誉教授。東方研究会・東方学院を創設。著書、訳書多数。日本学士院会員・文化勲章・勲一等瑞宝章受章
前田專學[マエダセンガク]
1931年生まれ。東京大学文学部印度哲学梵文学科卒業。東京大学名誉教授。日本学士院賞受賞。東方学院長として活動(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りー
13
ラジオの講義を活字化した本。この下巻では、浄土三部経(阿弥陀経、大無量寿経、観無量寿経)、華厳経、楞伽経(りょうがきょう)、金光明経、理趣経を解説。それぞれの経典の特徴だけでなく、成立の背景や、訳経僧の立場まで触れてくれているので呑み込みやすい。阿弥陀経…極楽浄土の見事さを語り、念仏往生を説く/大無量寿経…阿弥陀仏の衆生救済の誓願について説く/観無量寿経…阿弥陀仏と極楽の観想法を説く、というようにそれぞれテーマがあり、それを物語仕立てで語っている。西ローマ帝国滅亡が仏教衰退に繋がったことに納得。2020/04/20
ホシ
13
中村元先生が89年4月から9月まで行ったNHKラジオ講義「こころをよむ/仏典」の活字化書籍・シリーズ完結本。本書では「浄土三部経」『華厳経』『楞伽経』『金光明経』『理趣経』を解説します。大乗仏教において極めて重要な位置を占める経典の入門・解説書である本書は、私がシリーズの中で最も読みたかったものです。特に『楞伽経』と『金光明経』については全くの無知でしたので、興味深く読みました。また、『観無量寿経』の成立過程を詳しく知りたいと思いましたね。最近の研究で明らかになった事があれば、読んでみたいです。2018/08/26
roughfractus02
5
商人階級に支えられた大乗仏教は交易相手の西ローマ帝国の滅亡によりインドから東へ移動する。他者救済の理念は、阿弥陀経の荘厳な浄土描写、無量寿経の正覚を得る念仏実践、極楽世界を往生する者を9種(九品)に分ける観無量寿経の浄土三部経によって、娑婆と浄土の関わり方を具体化させる。一方、縁起宇宙の存在論は、華厳経や禅思想のベースとなる楞伽経が意味の深みへと探求を続ける。さらに、仏陀の慈悲は他者救済を正法とし国家を守らんとする金光妙経へ、般若は縁起宇宙に触れんと勤行する理趣経の密教へとバージョン化して日本に辿り着く。2021/04/17
きさらぎ
5
「阿弥陀経」「大無量寿経」「観無量寿経」「華厳経」「楞伽経」「金光明経」「理趣経」を解説する。「華厳経」に2章を割いており読み応えがある。善財童子が求道の旅で遊女に教えを受けるが、男女にまつわる部分を漢訳の際に苦心して音訳のままにしていたりといった精神風土の違いの解説も面白い。「正法を以て国を守る」異色の金光明経の章も興味深かった。仏教観が「欣求浄土・厭離穢土」の浄土教に偏りすぎていたのかも。真言密教の「理趣経」、禅宗に影響を与えたという「楞伽経」は碩学の著者の解説でもなおやや難解。いずれ再読したい。2018/11/28
マウンテンゴリラ
3
浄土教、華厳宗、禅宗、密教と、日本仏教を代表する各宗派の基本仏典を分かりやすく解説してくれており、安らぎや親しみをも感じさせてくれる面があった。しかしその一方で、仏教の発祥地であるインドにおいて、仏教が衰退してゆく時代の流れも示されており、哀愁を感じさせる面もあった。仏典の内容も、時代が下るにつれ複雑化し、庶民の支持が得られにくくなったことが衰退の要因ともいえるのだろう。また、既存の宗教、バラモン教ーヒンズー教との妥協、一体化を目指し、結果的にそれに失敗したともいえるのだろう。→(2) 2020/02/20