出版社内容情報
国家の内部と外部、正義と邪悪、文明と野蛮の境界線にこそ、政治は立ち現れる。近代の政治理解に縛られる我々の思考を揺さぶる論集。
内容説明
内部/外部、われわれ/彼ら、日常/非日常、正義/邪悪などの境界線を引いて事態を管理しようとする企てにこそ目を向けなくてはならない。境界線に立ち現れる政治の可能性と限界について考察した旧版に、新たに関連する二論文を増補。近代の政治理解に縛られる私たちの思考を根底から揺さぶる論集。
目次
第1章 政治と境界線―さまざまな位相
第2章 境界線を引くとはどういうことか
第3章 全体性・多元性・開放性―政治観念の変容と政治理論
第4章 法と暴力―境界画定/非正規性をめぐって
第5章 寛容と差異―政治的アイデンティティをめぐって
第6章 普遍的なるもののヘゲモニー―エルネスト・ラクラウの政治理論
第7章 契約と闘争―新しい戦争か?
第8章 二分法の暴力―マイケル・ウォルツァー正戦論をめぐって
おわりに―主権・境界線・政治
著者等紹介
杉田敦[スギタアツシ]
1959年生まれ。東京大学法学部卒業。現在、法政大学法学部教授。政治理論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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spanasu
10
境界線を引くことで、外部を排除し、同時に内部での差異の排除も図られ、そこでは動物飼育に近いフーコーの生-権力も働く、、、といった第三章がこの本の主題だと言える。他にも社会契約論、リベラルデモクラシー、正戦論といったところに筆者は境界線と暴力を見出しつつも、境界線を引く意味やアイデンティティの政治の限界も指摘する。この本が、境界線を引く暴力に自覚的であるべき、という結論をとりあえず設置して終わってしまうように難しい課題である。2020/03/04
Ex libris 毒餃子
5
「境界線」をキーワードにして政治に関わる事象を論じていく本。あちらとこちらを区切るところから政治学は始まるのだと実感。2016/01/15
まあい
5
「国内/国外」「文明/野蛮」「我々/彼ら」など、境界線を引くことで政治が行われている。その事実に対して、近代は無自覚であった。境界線から逃れられないとしても、私たちは境界線の存在を自覚しなければならない。そして境界線を引く前に、その境界線がどんな影響を与えるか考えることが求められる。引用「われわれに最低限求められるのは、自らの引く境界線が排除しているものが何かを、見つめ続けることではないだろうか」(p266)2015/12/25
WAO
3
シュミットと共にシュミットに抗して考えていてすごい 2021/03/15
おかえ
3
杉田先生とは、完全に問題意識が重なるなあ。なので大変勉強になった。他の本も読もう。2018/01/23