出版社内容情報
「従軍慰安婦」の存在は周知のものだったにもかかわらず,1990年代の当事者による告発まで,なぜ彼女らの存在は「見えて」いなかったのか.「慰安婦」問題が付きつけるすぐれて現代的な課題を,フェミニストとして真正面から論じ話題となった『ナショナリズムとジェンダー』
内容説明
「従軍慰安婦」の存在は周知のものだったにもかかわらず、一九九〇年代の当事者による告発まで、なぜ彼女らの存在は「見えて」いなかったのか。「慰安婦」問題がつきつけるすぐれて現代的な課題を、フェミニストとして真正面から論じ話題となった著書に、戦争・国家・女性・歴史にかかわるその後の論考を加えた新編集版。
目次
1 『ナショナリズムとジェンダー』(国民国家とジェンダー;「従軍慰安婦」問題をめぐって;「記憶」の政治学)
2 戦争の憶え方/忘れ方(国を捨てる;今もつづく「軍隊と性犯罪」;沖縄女性史の可能性;戦争の憶え方/忘れ方)
3 その後の「従軍慰安婦」問題(記憶の語り直し方;「民族」か「ジェンダー」か?―強いられた対立;アジア女性基金の歴史的総括のために)
著者等紹介
上野千鶴子[ウエノチズコ]
1948年、富山県に生まれる。1977年、京都大学大学院社会学博士課程修了。現在、ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長、東京大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Satoshi
11
上野千鶴子による戦争論といった内容。女性の国家化というキーワードで婦人の戦争協力から従軍慰安婦まで論じている。戦争の加害の側面でなく性暴力としてとらえたら、この問題の鮮明化に時間がかかったことが理解できる。また、公文書のみをエビデンスとするのでは、限界があり、被害者に寄り添えない。2024/11/06
politics
5
「女性の国民化」の鍵概念のもと、戦前日本のフェミニスト思想家分析、慰安婦問題から提起された記憶の政治学、歴史学の分析など、表題通りジェンダーとナショナリズム関連の論文を集めた一冊。高群逸枝についてはあまり知らなかったためその思想の特異性は興味深い。「慰安婦」問題然りジェンダー問題がナショナリズムとどう絡み合うのかその一端を伺うことが出来たが、その解決には両国のナショナリズムの負の側面を押さえて解決するしかないが、果たして「完全」解決する時は来るのだろうか。2023/07/08
あまん
4
「慰安婦」問題について、私の「社会学」的な認識が欠如していたことがよく分かった。「慰安婦」問題の戦争責任主体に関して、上野氏はやり玉に挙げられているが、そんなに非難を受けることなのか。私の理解が正しければ、日本国民としての責任はとらなければならないとして、その前提のもと、「わたし」個人として、ジェンダーの視点から責任を取っていくということなのではないか? 文書史料至上主義にも問題はあるが、それは急進的な保守層であって、歴史家の実証は大切だろう。一方で、真偽にのみ重きを置く歴史学には限界もある。2023/04/09
まあい
4
これはすごい。戦時中の日本フェミニズム言論を辿り直し、従軍慰安婦の問題を根本に立ち戻って問い直し、フェミニズムはナショナリズムと相いれないことを力強く論証する。旧版発表後の反応およびそれに対する応答も収録されており、資料としても使い勝手が良い。(引用)「『わたし』が『女性』に還元されないように、『わたし』は『国民』に還元されない。そのカテゴリーの相対化をこそ意図している。」(p199)2016/07/07
元気!
3
慰安婦問題をフェミニズムとナショナリズムから徹底的に分析していてとても良かった。文体も平易で読みやすい。2021/12/09