内容説明
日本近代の知の最良の部分を体現する内田魯庵と彼をとりまく粋な人間たち。下巻では趣味誌「いもづる」が作った地方のネットワーク、魯庵と荷風の関係、魯庵の文化史家としての側面、本好きの若い友人たちとの交際などを描く。『「挫折」の昭和史』『「敗者」の精神史』と共に、「日本近代史の見えない部分」を描く歴史人類学三部作が完結。
目次
2 魯庵の星座(地方を結ぶ「いもづる」ネットワーク;「いもづる」に集まった人びと;ハイブラウ魯庵の敗北―三田平凡寺;大正の現実と国際的知を繋ぐ力―アントニン・レーモンド ほか)
3 魯庵のこだま(『バクダン』を読む―文化史家魯庵;奇の人類学;未来派・戦争画批評;広告・ポスター考 ほか)
著者等紹介
山口昌男[ヤマグチマサオ]
1931年北海道生まれ。55年東京大学文学部国史学科卒業後、東京都立大学大学院で文化人類学を専攻。東京外国語大学名誉教授。「中心と周縁」「スケープゴート」「道化」などの概念を駆使して独自の文化理論を展開している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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猫丸
9
明治・大正期における民間学術ネットワークのカナメの位置に内田魯庵を置く。彼を中心として非官立のヨコのつながりを整理すると、だいぶ見通しがよくなった。江戸趣味から世界最先端のモダンまで、おそらく漱石に比肩し得る実力を持った魯庵の触手に引っ掛かってくる人物達がまた面白い。その中心思想に「蒐集」を見るのは、あながち山口昌男の視点に限った話でもなかろう。そうなると「山脈」の冒頭には蒐集集団「集古会」の面々がくることになる。林若樹、坪井正五郎が代表。ここからアメリカの人類学者フレデリック・スタールにリンクが伸びる.2024/07/11
miunac
1
冗漫で無計画で繰り返しまたは説明不足が多く、おそらく連載後の改稿などしなかったのだろうと推察される。ただ、そういった知的閑話自体に価値があるという主題なので、そこを責めるのは当たらない。殊に関心したのは、特に日本では文学イコール小説だと思い込んでるという指摘で、エッセイや批評もまた小説・戯曲に劣らず文学の重要なジャンルであるという点である。本書の中に「畏友」として登場する坪内祐三もおそらく同じ考えであったろう。個人的には斎藤昌三と木村毅が読みたくなったが、例によって新刊書店にはない。2021/03/30
慶多楼
0
それにつけても気になるのはインカの壷。 2011/02/19
石橋
0
魯庵の山脈というより、山口昌男の毛細血管。得られた知見がしまい込まれていた知識と結びついて、また新たな興味を生む。果てしないことがとても面白い。2020/10/03
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