内容説明
脱構築の思想とは何か。それが文学批評にとって持つ意味は何か。本書1で脱構築の思想を検討したのに続き、本書2では脱構築的な批評の一例として、メルヴィル、イエーツ、ルソーなど英米仏の文学作品やフロイトの読み方を提示する。それは哲学的手法の文学研究への応用ということにとどまらず、テクストの独自な論理を発掘する作業でもある。ポスト構造主義を学ぶための必読書。
目次
第2章 ディコンストラクション(脱構築)―承前(制度と逆転;その影響)
第3章 ディコンストラクションと批評
著者等紹介
カラー,ジョナサン[カラー,ジョナサン][Culler,Jonathan]
1944年生まれ。コーネル大学教授。英文学・比較文学。ハーヴァード、オックスフォードの両大学に学び、ケンブリッジ大学特別研究員を経て現職
富山太佳夫[トミヤマタカオ]
青山学院大学文学部教授。英文学
折島正司[オリシママサシ]
青山学院大学文学部教授。アメリカ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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またの名
11
膜だの散種だのといった性的含意があったりするテクストの周縁の些細な言葉を取り上げ、そうした細部によって全体の有機的調和の破綻を炙り出す戦略のために、どんどん複雑化し自己言及的になっていった脱構築。疫病のように流行った脱構築に対して、デリダのオリジナルを信者が劣化コピーし続けてるのだと指摘しても、それこそお得意のオリジナル/派生物という二項対立の問題の重要性が露わになるだけ。反復を論じながらある構造を反復してしまうフロイトを反復するラカンを反復するデリダを反復してしまう…事態が、脱構築の袋小路であり強み。2015/05/12
NICK
3
下巻では、脱構築が二項対立を産み出す制度をその制度自身が逆転させるのを見つけ出す読みであることや、イェール学派、とくにバーバラ・ジョンソンやポール・ド・マンの実践的な文学批評を紹介している。脱構築批評なんて今となっては時代遅れなシロモノかもしれないが、今、デリダやイェール学派の思考にアクチュアリティを見出しとしたらどのような部分だろう。東浩紀のコミュニケーション論にそのエッセンスが含まれてるようだが……2011/12/14
ヒ
1
フェルマンのねじの回転論読みたい2019/10/15
なべさん
0
二巻では愈々脱構築批評の具体例などが述べられる。脱構築批評は特にアメリカのイエール大学で発展したが、アメリカの批評の根底には、分析の目標を個々の作品を豊かにする解釈を生み出す事だとする前提があるそうだ。然るに、もし解釈を脱構築の目標であるとすれば、それが意味の決定不能性を主張するのは自殺行為ではないか、という批判にも一理はある。しかし、脱構築がテクストにまつわる現象を理解しようとつとめた結果、それ自体疑問をうけつけるものになるとしても、その不十分性を認めることこそ、批評と分析と価値転換に至る道なのである。2020/04/26