内容説明
五四巻の物語が巻数順に執筆されていないことは、何を意味するか。本書は、原作のほのかな言葉遣いから主題の展開をつかみ、『源氏物語』の成立過程、明瞭な構造を明らかにする。また、紫式部の恋愛と失意を歌集・日記から読み取り、創作との関連を鋭く見抜いて物語の奥深い世界に新たな光を当てる。この源氏理解は、読者の共鳴を呼び起こすものであろう。源氏物語千年紀に刊行する画期的源氏論。
目次
1 はじめに―何を読むか
2 まずは平安時代の婚姻について
3 桐壷巻の位置―物語の設定
4 桐壷巻と帚木巻は連続しない
5 a系の物語
6 b系の物語
7 紫式部の生活
8 cの物語
9 dの物語
著者等紹介
大野晋[オオノススム]
1919‐2008年。学習院大学名誉教授。東京大学文学部卒業。国語学者。文学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鈴木貴博
3
大野先生の源氏物語論。所謂第一部の若紫系・玉鬘系、若菜から幻までの第二部、匂兵部卿から夢浮橋までの第三部、この四つに分けて執筆されたことを明らかにし、それぞれの違いと、それをもたらした理由について、紫式部の生活や考えの変化や、紫式部日記を読み込むことを通じて見出した紫式部の性格、境遇や心境の変化などをもとに、明らかにしていく。刺激的で面白く、謎に一定の解決が与えられる仮説であるが、一方で丸谷才一先生が巻末に付した文章には異論の提示も。奥深く果てしない源氏物語の世界を更に豊かに見ることができる一冊。2021/01/18
星菫
2
学者の「源氏物語」本を読むのは久しぶりなので新鮮だった。大野先生は女性を買いかぶっていらっしゃる。女だって貴公子が失敗する話は面白く感じますよ。2019/10/18
わせりん
2
源氏物語の解剖。ある言葉を数えて傾向を見たり、執筆の順番を分析したりとあらゆる視点で考えいく。最古で最高の物語は果てしない。2019/09/27
skydog
2
あらためて「源氏物語」を読み解くことの難しさを痛感した。 「源氏物語」に対しての言語学的なアプローチは大変素晴らしいものだ。語法について解説しながら、「若紫」グループと「帚木」グループ分の違いと特徴を明らかにしていく。 そして「紫式部日記」と「源氏物語」の関連付けなど……。 しかし、このようなところまで理解しないと「源氏物語」を理解することはできないようだ。 巻末に載せてある、これは解説と言って良いのだろうか?本書に寄せてある丸谷才一氏の「まぼろし電話」も必読である。2015/07/29
MrO
2
名著です。言葉から迫る源氏物語。これは学者にしかできない仕事です。2012/09/23