内容説明
宗教を問うことは人間を問うことである。私とは何か。東西の伝統の狭間で、人間の生涯をいかなる文脈で捉えるべきか。無我の境地とは果たして可能か。人間の生死と宗教はどう関わり続けているか。人間として生きることの真実を求めて、古今東西の叡智と対話し続けてきた著者が到達し得た思想の深みを鮮やかに示す新編集版の著作集成。
目次
「宗教とは何か」へ(秋深し;世界と海;「楠の神様」と流れ星;今しばし;生きる時・時;「この世」ということ;人間の障害ということ)
現代と宗教―「問題」
宗教とは何か(「宗教とは何か」に向けての「人間であること」の自覚;直立して「“我”と言う」―人間存在の原態;「世界」の見えない二重性―「虚空/世界」の霊性;自覚と自意識;人間として生きること―「生命―生(生活/人生)―いのち)
絶対無の宗教哲学(「無と空」をめぐって;無我ということ;逆対応と平常底;「死の哲学」へ)
人間(清沢満之―絶対他力における「境遇と境涯」;夏目漱石―「自己本位」と「即天去私」;山頭火と放哉―「自由律俳句」詩人と仏道)
著者等紹介
上田閑照[ウエダシズテル]
1926年東京生まれ。京都大学文学部哲学科卒業。京大名誉教授。専攻・宗教哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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大道寺
4
上田閑照の宗教に関する著作集。「楠の神様」で笑ってしまってすみません。一番面白いのは「絶対無の宗教哲学」の前半。西田幾多郎が禅という所に立って宗教を哲学したことについて語る。後半の田辺元の「死の哲学」に関する文は適当に読んだ。やがて死ぬ自分という存在を意識すると宗教と哲学を通らざるをえないように私は思う。人間の行為の責任が成り立たなくならないようにということを考慮している所が本書のつまらないところだ。大人として日常を生きる時には考慮した方が良いことだとは思うが。2011/12/23
amanon
3
非常に読み応えのある内容の濃い一冊。宗教というテーマに沿ってはいるものの、そこで取り上げられている内容は非常に多岐に及ぶ。ここでメインとなるのは、やはり「絶対無の哲学」だろう。全てを理解したとは言えないが、西田と田辺の思想の近似性と相反性を改めて認識させられることになった。また、個人的には最後に収められた「山頭火と放哉」を非常に興味深く読んだ。この二人も相反するところと似通ったところを合わせもっていたという事実が面白い。効率ばかりが求められる昨今にあって、こういう本の価値が見直されるべきではないか。2013/04/25