出版社内容情報
本書は朝鮮戦争最大の謎である中国の参戦過程を初めて明らかにした.毛沢東の参戦意図,周恩来・スターリン会談の内容と意見の相違など数々の事実を掘り起こし,中国参戦が及ぼした戦後世界への影響を考察する.改訂決定版.
内容説明
本書は朝鮮戦争最大の謎である中国の参戦過程を初めて明らかにした。中国の戦争前の状況分析、戦争準備、金日成指導部への対応を解明し、毛沢東の参戦意図、周恩来・スターリン会談の内容と意見の相違など、秘密のベールに包まれてきた数々の事実を掘り起こす。併せて、中国参戦が及ぼした戦後世界への影響を考察する。新資料を補い、各国の最新の研究成果を盛り込んだ決定版。
目次
第1章 中国と朝鮮戦争の開戦
第2章 米国の介入に対する分析
第3章 東北辺防軍の創設と召集
第4章 対ベトナム・台湾の戦略調整
第5章 高崗と林彪の異議申し立て
第6章 「弓につがえられた矢」
第7章 大論争
第8章 出兵と中止の狭間で
第9章 周恩来の秘密訪ソ
第10章 鴨緑江の彼方へ
第11章 五〇年後の回顧
著者等紹介
朱建栄[シュケンエイ]
1957年中国上海市生まれ。81年華東師範大学外国語学部卒業。84年上海国際問題研究所付属大学院修士課程修了。86年来日。総合研究開発機構客員研究員、学習院大学客員研究員などを経て、現在東洋学園大学人文学部教授。政治学博士
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感想・レビュー
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夜間飛行
173
開戦前の中国軍は農耕に移行するか、台湾侵攻の準備を進めつつあり、朝鮮の戦火を殆ど想定していない。この戦争は、渋るスターリンや毛沢東を巧みに御した金日成が無理に仕掛けたらしい。ところがこれを中ソの戦略と見たトルーマンが声明を出すや、中国軍の動きは一変する。毛は、米の狙いが中国侵略にあると見て原爆を落とされても国を挙げて戦う決意を述べる一方、義勇軍という名称で対米全面戦争は行わない意図も示している。その真意は防御のための攻撃にあったように思われる。冷戦初期に米中ソが過敏になっている状況の緊迫感が伝わってきた。2023/07/21
らい
10
国民党との内戦に勝って、国内の再スタートを図ろうとしていた中国共産党。台湾問題や国内の経済問題を優先させたいが、朝鮮半島から伸びてくる米国の影。心底帝国主義に疑い深くなっていて、その警戒心は、かなり敏感。ソ連もどこか煮えない相手で、その辺のバランスが出兵と中止を行き来する原因だったのね。ベトナムの仏軍であったり台湾や日韓の米軍であったり、アジアをアジア人の手に帰すことに、帝国主義的侵略に一番うんざりしてたのはこの当時は中国かも知れないな。そのあと何が蓄積されたのか、自ら覇権的な動きに出てくるわけだが。2022/04/12
BLACK無糖好き
5
中国が朝鮮戦争に参戦するまでの過程で、共産党指導部の意思決定が何度も揺れ動いた様子が記されています。国内情勢が不安定な中、指導部の大半が即時参戦には否定的であったが毛沢東の参戦方針に引きずられていく。その毛沢東も最後の最後まで参戦を悩みぬく場面が印象的でした。スターリンがモスクワの闇の中で一人ほくそ笑む姿を思わず想像してしまいます。著者はBSフジ「プライムニュース」の中国関係のテーマで出演した際に、ことさら中国の立場をヒステリックに強調する姿勢が目に付きますが、本書は学術研究として高く評価したいです。2015/07/17
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