出版社内容情報
日本人の起源を南島に求め,同質的な日本を見出す「新国学」たる民俗学の成立は,柳田の韓国併合への関与によってもたらされた.早川孝太郎,伊波普猷も俎上にのせ,民俗学と植民地主義との関連を追及する新編集版.
内容説明
山人論を放棄して、柳田はなぜ南島論へ転じたのか。日本人の起源を南島に求め、同質的な日本を見出す「新国学」たる民俗学の成立は柳田の韓国併合への関与によってもたらされた。その他、『花祭』で知られる早川孝太郎、沖縄学の父・伊波普猷も俎上にのせ、近代日本における民俗学と植民地主義との関連を徹底追及する新編集版。
目次
1 柳田国男と植民地主義(南島イデオロギーの発生;コメ難民の死;「遠野物語」の発生;「孤児」・「アイヌ」・「滅亡」・「常民」 ほか)
2 日本民俗学と植民地主義(日本民俗学と農村―早川孝太郎について;「満蒙開拓」の“ふるさと”―日本民俗学とファシズム;起源と征服―伊波普猷について;反復する虚構―「日本民俗学」の現在)
著者等紹介
村井紀[ムライオサム]
1945年中国天津生まれ。国学院大学卒業。都立駒場高校教諭、国学院大学講師、同大学折口博士記念古代研究所研究員、藤女子大学文学部教授、コーネル大学研究員、UCLA客員教授をへて、和光大学表現学部文学科教授。専攻は日本文学・日本思想史
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感想・レビュー
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ステビア
7
これも苛烈な柳田(を含む、コロニアリズムを隠蔽した「一国民俗学」)批判。相当話題になった本のようです。先走り気味のところもあるが全体としては納得できるような気がする。これもどんな反論が出てるのか気になる。2014/02/08
肉欲棒太郎
2
本書を読み、極悪な天皇制ファシスト・柳田国男のイメージが形成される。しかし柳田に関する客観的な事実としては、「日韓併合」の際に柳田が法制局の官僚として法律整備に関わっていたということだけで、それによって作家としての彼の全仕事までをもポスコロ的正義に基づいた批判のみでほぼ切り捨ててしまうのはやや強引でないかという気も。2015/10/26
志村真幸
1
柳田国男、折口信夫、金田一京助らを「植民地主義」という視点から批判した一冊である。 柳田への沖縄や植民地朝鮮への視線から帝国主義を見出したり、金田一の文章からアイヌへの蔑視を嗅ぎ取ったり、折口が軍国主義に同調していたことを証拠立てたり。 ただ、2021年現在の視点から読むと、もはや当たり前の議論となっているのもあって、粗さばかりが目立つ。そもそも「証拠」に説得力がなくて議論が立証できていないし、屋上屋を重ねるような論理展開にはついていけない。 一定の意味はあったが、すでに乗り越えられた話だろう。 2021/05/16
gunji_k
1
映画「セデックバレ」観てるとかなり掴みやすいので絶対におすすめ。怪談好き、民話好きには外せない好々爺、柳田國男が考え得る限り最悪のタイプの学者である可能性。「近代や科学を相対化する想像力としての怪談」「古の日本の原風景としての沖縄」「台湾は親日」とか、気軽に語る識者って、この本読んでないか、意図的に無視してるかってことか。ホラーだ。2014/08/01
甲斐シュンスケ
1
先生から借りた本。柳田国男を嚆矢とする民俗学、それが孕んでいる欺瞞を徹底して糾弾する内容。アカデミズムの持つ支配の力や眼差しをこれでもかと抉る激しい語り口。僕のように学究に単純に憧れているような人間にとっては背筋が冷えるほど恐ろしい本だった。2013/06/28