岩波現代文庫
アパシー・シンドローム

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  • サイズ 文庫判/ページ数 361,/高さ 15cm
  • 商品コード 9784006000950
  • NDC分類 371.47
  • Cコード C0111

出版社内容情報

1970年頃から,従来の精神病理学では解きがたい無気力な現象が大学生に現われる.豊かさと高学歴を背景に自立への不安をもつ青年期の問題を豊富な臨床例で考察.「ひきこもり」論に多くの示唆を与えた先駆的著作.

内容説明

一九七〇年前後、「退却」「逃避」と表現できる無気力な現象が大学生に現れはじめた。著者は、従来の精神病理学では解きがたい現象を考察しながら、自立への不安をもつ当時の青年像を浮かび上がらせた。豊かさと高学歴がもたらす新しい症候を論じた本書は、その後の「ひきこもり」論に多くの示唆をあたえた先駆的著作である。

目次

第1部  青年の自立と個性化をめぐって
アイデンティティと現代
現代病としての境界例
大学生と対人恐怖症
人みしり―正視(視線)恐怖症の臨床
大学生の精神衛生のために
キャンパスの精神病とノイローゼ
青年の自殺
現代の神経症―とくに神経症性アパシー(仮称)について
退却神経症withdrawal neurosisという新カテゴリーの提唱
アパシー・シンドロームapathy syndromeをめぐって
アパシーの病前性格
境界例の概念をめぐって―スプリットという防御機制についての一考案
無気力からの復路のために

著者等紹介

笠原嘉[カサハラヨミシ]
1928年生まれ。京都大学医学部卒業。名古屋大学名誉教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

OjohmbonX

5
本書の途中で、子供にとっての他者は親とか教師とか友人とか具体的な他人であって、「世間にとってどうか」「人間としてどうか」といった抽象的な他者を想定して行動するわけじゃない、そうした具体的な誰かを超越した「他者一般」に出会うのが青年期だ、という指摘があって、高校生や大学生がバイト先でふざけてSNSで投稿して炎上しちゃうのも、友人の反応しか想定してなくて世間の反応がすっぽり抜け落ちてるのもこれか、と思った。2019/04/13

Schuhschnabel

3
大学生を中心とする青年期の無気力について、さまざまな角度から考察されている。読み終わったら何だか気力が湧いてきた。自分よりはるかに深刻な無気力に悩まさていても回復できたということに励まされたのであろうか?やっぱり精神科医の文章は面白い。2017/03/12

Pezo

2
精神医学分野のジャーナルへの寄稿をまとめた本なので、重複箇所がかなりある。また前提知識をそれなりに要求する。しかしそうした点を差し引いた上でも、今なお示唆的でおもしろい本だった。2020/08/06

菊田和弘

2
退却神経症、モラトリアム、アイデンティティ障害、ひきこもり・・・。これらの単語に何か感じた人は読まれるといいと思います。目には見えない人の真実の積み重ね(物語)を、ていねいに言語化されていて、私にとっては必読の書でした。目に見えないものを見ようとしない人たちが、彼ら彼女らを追いこんでいるとも知りました。2013/07/24

ほたぴょん

2
大学生程度の年代を中心に起きる「無気力」を鬱とも違う精神病理のひとつとして位置づけようとした、精神病理学のひとつの精華(と言っていいであろう)。学校に来なかったり本業に身が入らなくなるだけで、趣味やバイトなどには熱心であること、本人が治療に乗り気でない場合が多いことから、単なるサボリや「軽い鬱」と見なされがちなこの症状を「軽症に見えることはかえって治療が困難になり病根が深い」と喝破しているのはなるほどと思わされた。この症状はかなり日本に偏って見られるものらしい。現代の社会的引きこもりとも共通項が多そう。2012/05/22

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