出版社内容情報
「である」ことと「する」ことなど,卓抜な概念が多くの人を魅了してきた新書『日本の思想』には,既成の丸山像を揺るがす力が秘められている.「開国」論の大胆な読みかえを軸に,丸山真男の果たしえなかった課題に迫る.
内容説明
「である」ことと「する」こと、「タコツボ型」と「ササラ型」、「実感信仰」と「理論信仰」など、卓抜な概念が多くの人を魅了してきた岩波新書『日本の思想』には、「戦後民主主義の思想家」という既成の丸山像を揺るがす力が秘められている。日本の伝統から積極的な価値を引き出そうとした丸山「開国論」を参照系としつつ、丸山真男の果たしえなかった企図を今日において引き継ぐ力作評論。
目次
「戦中と戦後の間」―丸山真男の思想史的位置
「「である」ことと「する」こと」(近代社会の論理;日本近代社会の特質)
「思想のあり方について」―「近代」と「開かれた社会」
「近代日本の思想と文学」(「開国」問題のケース・スタディとして;「開かれた知的共同体」の条件)
「日本の思想」(「伝統」の多義性と「開国」への新たな視点;「開国」と「日本近代」)
著者等紹介
宮村治雄[ミヤムラハルオ]
1947年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。現在、東京都立大学教授。日本政治思想史専攻。著書に『理学者兆民』『開国経験の思想史』などがある
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感想・レビュー
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那由田 忠
4
丸山の展開しようとした答と、私が考えていることは違うようだけれど、彼が「日本の思想」で射程に入れようとした意味が少し分かってきた。欧米でも無理なことを日本に要請している気がするものの。制度の見方は慣習の働きと共に見ていく必要があるけれど、そうした見方がないので永遠の制度生成の努力みたいなことになって、半分全共闘めいた考え方になる。全共闘に苛められたのは近親憎悪だったわけだ。 最大の問題点は、著者が問題意識をきちんと語らないこと。晩年に丸山が展開した「原型」論が説明されないので、肝心な部分が不明。2014/12/08
MrO
3
読んだ気になっている恐ろしさ。ちゃんと読み返そうと反省。2019/05/30
lilysX
2
思想のナマモノ性を痛感させられた2022/02/15
fishdeleuze
2
丸山眞男『日本の思想』の講義録。丸山の著書は岩波新書から出版されているが、本書で解説されているとおり、新書レベルの本ではない。本書は、講義をもとに書籍化したもので、読みやすく『日本の思想』を読むためのサブテクストとしておすすめ。2009/01/31
シロクマぽよんぽ
1
『「である」ことと「する」こと』の解説を読むために手に取った。近代社会を青写真のように状態として想定すべきでない、という指摘は面白い。グローバリゼーションが不可逆的に進む現代に、ナショナルアイデンティティはより重要度を増すはずだ。保守主義の成熟していない日本は、今後何を伝統と位置付け、どのように伝統を成熟させてゆくのだろう。明治維新・戦後ともに、急造国家として急激な近代化を進めた限界が来ていると思う。2021/02/10