出版社内容情報
20世紀最高の哲学書とされてきたハイデガーの『存在と時間』は,構想された3分の1しか書かれていない未完の書である.ハイデガー文献を徹底渉猟して未完部分を構築し,ハイデガー像を一新する謎解き『存在と時間』.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぷるいち
10
題名の通り、ハイデガー「存在と時間」の未刊行部分を再構築することを目的とした本書。①「存在と時間」の概要の理解と、②ハイデガーの思想全体の見取り図をつかむために本書を手にとった。①の要旨と感想だけ書きたい。というか、それだけでもだいぶ長い。 「存在と時間」は「存在一般の意味は何か」という問いに対して、「存在の意味は時間である」と答えるために書かれるはずだった書物である。 (ハイデガーは全三部のうち一部しか刊行していなかったので、その結論まではいたっていない)2017/08/11
グスタフ
10
未刊に終わった『存在と時間』の、その未刊部について再構築してみるのが本書の主旨なのだが、むしろ既刊部のまとめが簡潔で参考になる。自分自身も少しずつドイツ語の原書にあたっているところだが、木田先生とは勿論次元が違うが『存在と時間』は、何か惹きつけられる一書だと思う。2014/10/20
Happy Like a Honeybee
9
神秘的なのは、世界がいかにあるかではなく、世界があるということである(ウィトゲンシュタイン) ハイデガー研究のオーソリティ木田元氏による一冊。 実存主義の立ち位置や、存在と時間の概要について。 日本人にはキリスト教に対する認識が甘いので、背景を知るにはもっと知見を深めないと。 シグナルとシンボルの違い。 原本と格闘しながら、哲学の真髄が掴めれば..。2021/03/28
Ex libris 毒餃子
8
ハイデガーを読むにしても、ギリシア哲学に還り、語学をゴリゴリやらないと解らない。ということがしみじみわかった。しかし、それを感じさせない、木田元の執筆力。物事に詳しいってのはこういうことなんだなあ。2021/04/09
さえきかずひこ
7
非常にすこぶる面白い。特に世界内存在という概念の元ネタ(シェーラーの世界開在性、ユクスキュルの環境世界理論)に触れているところが白眉。ハイデガーが同時代の生物学からの影響を受けていたことを知れるのはたのしい。第1章は『存在と時間』の入門者にも良いだろう。2013/10/30