出版社内容情報
なぜ歴史的に考える力が必要なのか。それは過去の上に立って、今を生きていることを私たちが忘れがちだからだ。結果、現代で起こる問題を近視眼的にしか捉えられず、社会を息苦しいものにさせている。近現代日本の歩みを振り返りながら、現在進行形の諸問題との連関を検証し、よりよい今、そして未来をつくる意義を提起する。
内容説明
歴史的に考える力が、なぜ、いま必要なのでしょうか。それは過去と対話しながら、ていねいに生きることが、より良い今日、そして未来をつくることにつながっていくからです。近現代日本の歩みをたどりながら、現在進行形の諸問題との連関を検証し、広い視野で物事をとらえていった先に、歴史を学ぶ意義と意味が見えてきます。
目次
序章
第一章 戦争と暴力が繰り返された時代―日清戦争からアジア太平洋戦争の敗戦まで
第二章 占領政策で変わったこと、変わらなかったこと―一九四五~一九五〇年代前半
第三章 苦しみを強いられ続ける人びと―一九五〇年代後半~一九八〇年代
第四章 冷戦終結と終わらない戦争―一九九〇年代~現在
第五章 歴史的な視点から現在の世界を読み解く
終章 「現在」は、過去、そして未来につながる
著者等紹介
宇田川幸大[ウダガワコウタ]
1985年、横浜市出身。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。日本現代史専攻。現在、中央大学商学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さとうしん
16
中国・韓国との徴用工・従軍慰安婦問題など歴史認識に関わる問題、あるいは「処理水」問題など現代の問題、沖縄の置かれた立場、ウクライナ戦争などを、「さかのぼる」「比較する」「往還する」の3つの手法により歴史的経緯や事実を概観しつつ、日本政府の対応や我々日本人の態度が適切なものであったのかを検討する。こういうのも「役に立つ」歴史学のひとつのあり方だろう。本書では昨今話題の「台湾有事」については触れられていないが、これは本書の手法を踏まえたうえでの読者に残された宿題ということだろう。2025/01/24
ののまる
7
現政権の政治家の方(とくに歴史修正主義の方々)、あなたたちでもきっとわかりやすいから、岩波ジュニア新書を読んでみて。2025/05/16
山中鉄平
2
良書だった。なるべく理性的に過去の事実を分析し悪いところは実直に反省し豊かな未来をつくっていこうという思いが感じられた。「さかのぼり」「比較」「往還」というワードを覚えておこう。こういう書は日本を愛する一部の人たちからはもう自虐史観から卒業せよと糾弾されるされるのだろうかと思った。ともあれ世には私の如く考え浅く自分の欲しか考えられぬ人が少なからずいそうだがそういう人をどう歴史に組み込んで役立たせるかの視点も見てみたい。2025/02/23
Go Extreme
2
過去と現在: 歴史を学ぶ→過去の出来事の原因や経緯理解 歴史的思考の実践ー戦争、暴力、貧困など現代問題理解←歴史の振り返り 戦争と暴力: 日清戦争の背景ー対ロシア警戒政策が戦争へ 社会的影響ー兵士の死が「名誉」 占領政策: 変化と継続ー民主化・非軍事化⇔戦争支持の考え残存 憲法制定ー制定過程と政治的影響 沖縄視点: 沖縄戦後史ー戦後も続く差別と暴力 冷戦とその後: 慰安婦問題ー政府対応と河野談話 戦争の影響ー過去の戦争が現代に与える影響 歴史的視点: 歴史を学び過ちを繰り返さない教訓 歴史修正主義や否定論2025/02/05
ファルコファン
1
「歴史的に考えること」は「過去と対話し、未来をつくる」ことだと具体的例をあげて書いている。第2章「占領政策で変わったこと、変わらなかったこと」では、日本国憲法制定、東京裁判、サンフランシスコ平和条約を例に、戦前の継続性を歴史的に記述している。例えば日本国民たる要件は、法律でこれを定めるなど重要な変更が国会で行なわれていること。東京裁判が1928年以前は裁いていないこと、つまり日本の帝国主義、植民地主義は裁かれなかったこと。人権を守るためには歴史学が欠かせないとする。現在の日本を考える実践的歴史学入門書。2025/03/20