内容説明
「差別や偏見は、真実を知らないことから生まれる」ハンセン病回復者として若者たちと交流を重ねる中で、著者は真実を知ることの大切さを語ります。14歳で発病、学びたい一心で療養所を逃走、根強く残る偏見や差別に揺さぶられた日々。自らの体験を通してハンセン病問題とは何か、どう生きるかをともに考える一冊。
目次
第1章 二〇〇一年五月一一日
第2章 人間を辱めること
第3章 子どもたちが風を起こした
第4章 脱走が私の人生をひらいた
第5章 回復者として生きる
第6章 きみたちに伝えたいこと
第7章 ハンセン病を理解するために
終章 伊波基金と私の夢
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
美登利
61
ジュニア向けに書かれたものですが、大人にもハンセン病の歴史から、虐げられてきた患者、回復者たちの苦悩、らい予防法、隔離されていた療養所での実体が詳しく分かる良書だと思います。私にとってハンセン病は聞いたことがあってもドリアン助川さんの「あん」を読むまではニュースでホテル宿泊拒否事件や裁判でやっと賠償請求訴訟が勝訴したんだと言うくらいの微かな認識でした。今でも何も知らないのに差別的な風潮は残る現実もあるのです。子供たちの無垢な意見交換が読んでいて素晴らしく自分に何が出来るのだろうという課題がわいてきます。2015/06/08
matfalcon
45
らい病予防法ができた年と消えた年を知っているか?「国の金で生かしてもらっている」と、不当に隔離された人間のマウントを取りにいけるか?失恋する自由も、リストラされる自由も、野垂れ死にする自由もなかった彼(女)を想像できるか?2020/07/11
aika
16
ハンセン病の患者さんに対して向けられた差別や偏見にまみれた数々の誹謗中傷の手紙の数々に、腸が煮えくり返る思いでした。社会から疎外され苦悩し続け、ようやくその尊厳が認められようとしている人々に対して、人はこんなにも残酷で惨い仕打ちができるのか。本当に憎悪が芽生えました。でも、そうした差別や偏見が生まれるのは人々の無知や無関心からです。これまでハンセン病のことを知らなかった私も、そうした差別に無意識の中で潜在的に加担していたのだ…。友達にハンセン病のことを話してみました。ここからはじめていきたいと思います。2014/11/28
メイロング
7
おもしろいけれど、出会うタイミングがとても重要な本。2000年以上続く人権問題で、ハンセン病資料館でさえその一端に触れることしかできない。その一ページ、国家賠償請求訴訟や宿泊拒否事件をはじめ、長野県で起きた風についてズームアップされて示されているのがいいですね。この本が出て13年たったけど、まだ「ハンセン病は過去の話」と言えない話が新たに出てくるのがこわい。2020/09/14
ポルターガイスト
4
ハンセン病についての理解を得るために買った。勉強にはなったが,買ったことを後悔した。岩波ジュニア新書はこれだから苦手だ。筆者の苦難に満ちた生涯のことを考えればその主観や感情が前面に出て当然だが,あまりにも「道徳的」で「人権の匂いがする」筆致はどうしても受けつけない。これは編集の責任と思う。誤解のないように書くがおれはハンセン病患者への差別には全く反対するしおれ自身が別のカテゴリで言えば差別の対象になるような社会的少数派だ。だからこそ→2022/06/04