出版社内容情報
ネジ1つから,最先端のハイテク部品までを,東京大田区の町工場街は造りだす.この町の技術の蓄積と奥深さ,職人たちの生きる姿を旋盤工50年の作家が心をこめて描き,ものを創ることのよろこびと,働くことの意味を考える.
内容説明
ビルの屋上から設計図を紙飛行機にして飛ばせば、三日後には製品になってもどってくる―ネジ一つから、最先端のハイテク部品までを造りだす東京大田区の町工場街。この町の技術の蓄積と奥深さ、職人たちの生きる姿を旋盤工50年の作家が心をこめて描き、ものを創ることのよろこびと、働くことの意味を考える。
目次
1 機械にニンベンをつけるとは、
2 手で人生を拓く
3 まぼろしの指
4 工場の仕事は味気ない?
5 夫婦工場・夫婦鍛冶
6 技術の伝達者たち
7 プロセスが大事
8 仕事と遊びの境界
9 教科書のない仕事
10 わたしの転機
11 いま町工場は
著者等紹介
小関智弘[コセキトモヒロ]
1933年東京に生まれる。都立大附属工業高校卒業後、1951年から大田区内の町工場で働く。現在はNC旋盤を駆使するこの道五十年のベテラン旋盤工。作家としても活躍
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
41
1週間がかりで読む。東京は大田区の町工場を舞台に、著者ともども、工業製品を作る多くの人々を描く、この本だけ読んで、わかった気になるのは、ちょっと早いだろう。肉眼で見てもわからない出来具合が、指先でならわかるという例には驚く。とうてい作れそうにないものでも作ってやろうという、チャレンジ精神というか、職人技には感動。しかし一言で言えない苦労も多いのだ。2017/10/23
メタボン
20
☆☆☆★ 生涯一町工場職人といった感じの小関氏。淡々とした語り口ではあるがものづくりにかける情熱が伝わってくる。インターネットがここまで普及した現代においては、何もかも変革のスピードが速い。しかし一方で小関氏のような伝統的なものづくり技術の継承にも意を用いる必要がある。それにしてもものづくりに携わる人の語りは面白く魅かれることが多い。2015/09/18
ひじき
20
旋盤工で作家、小関智弘さんが語る見習工から始まったもの作りに魅せられた半生。生き生きとした町工場の空気、「機械にニンベンをつけて仕事をするんだ」と教える大先輩。ものを作るということはこんなにも面白いものなのだ。小関さんの文章を初めて活字にしたのは、鶴見俊輔氏ら編集の雑誌「思想の科学」だったと思う。学者や知識人が普段の言葉で語る哲学論に混じって、小関さんの「粋な旋盤工」は圧倒的な実在感をもってびんびん響いた。簡潔で無駄のない誠実な文章は「ジュニア」を前にしても変わらない。彼の人柄と作るものそのままだと思う。2015/09/10
501
15
町工場の職人の話。著者自身も旋盤工に従事していた作家で現場の内側の雰囲気が伝わってくる。自分もプライドを持って仕事をしたいな。2022/09/10
紅花
11
工業高校に進学した息子。大卒じゃない下町の職人さんたちが日本の産業を担ってきた、とは頭ではわかっている。だから息子の進学も大賛成だった。でも、大学卒すら生活が難しい今の時代に、高卒でこの先大丈夫なんだろうか?という不安があった。それを払拭させてくれた一冊。確かに大企業に比べれば生涯賃金は劣るだろうけど、高い技術力を求め、誇り高く生きている。人間の生きる原点、働くことの原点や意味、意義を改めて考えさせられた。職人さんたちをないがしろにするようになったら、日本は終わりかな、と思う。2022/05/25