出版社内容情報
「自由・平等・友愛」を合言葉に,近代の世界史上に最大の劇的転換をもたらしたフランス革命-.この事件は,人間精神の偉大な達成である一方で,数知れぬ尊い命を断頭台へと葬った暗い影をもつ.なぜ革命はかくも多大な犠牲を必要としたのか.時代を生きた人びとの苦悩と悲惨な歩みをたどりつつ,その歴史的な意味を考える.
内容説明
「自由・平等・友愛」を合言葉に、近代史に最大の劇的転換をもたらしたフランス革命―。この事件は人間精神の偉大な達成である一方で、数知れぬ尊い命を断頭台へと葬った暗い影をもつ。なぜ革命はかくも多大な犠牲を必要としたのか。時代を生きた人々の苦悩と悲惨の歩みをたどりつつ、その歴史的な意味を考える。
目次
第1章 革命の偉大と悲惨
第2章 フランスではなぜ劇薬が用いられたのか
第3章 劇薬はどんな効果をあげたのか
第4章 劇薬の痛みについて考える
第5章 人間の偉大と悲惨
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
109
フランス革命による影響が、日本国憲法「すべて国民は、健康で文化的な最低限の生活を営む権利を有する」という第二五条に結実している。数多くの血を流して、百年かけて民主的な共和政を定着させた。劇薬として作用したこの革命を、17世紀のイギリス革命(ピューリタン革命と名誉革命)、19世紀の明治維新との比較が興味深い。イギリス革命が主に自由を目指し、フランス革命は主に平等を目指したこと、イギリスやフランスの革命は、人民が民権を回復することであり明治維新は武士を主体とした上からの恩賜の民権から近代化が始まったと論ずる。2022/10/22
harass
60
再読。呉智英の本で知る。ジュニア向けにフランス革命を分析し背景と経緯を描く。負の部分である後半の恐怖政治や虐殺に至る要因など実に明快。仏革命と英の革命や日本明治維新との明快な比較がある。当時の証言や文献を交えて当時の社会の状況の解説など、社会学歴史学に読み慣れてないものにも分かりやすく書かれている。なによりも、ありがちな一方的にワルモノを想定して論じていくことをしないで中立な記述がされている。少し語りかける口調が気になってしまったが、著者の人間への情熱と知性に感心する。名著。2017/04/04
樋口佳之
57
電子本化されての読了でした。ジュニア新書にふさわしい文章ですが、提出された問題は大きいと思います。「イエスかノーか」「善か悪か」あるいは「善も悪も無い」みたいな現代的な情報にさらされている少年少女には良い導きの書となるのでは。/自由という言葉には激しい対立は生じにくく、平等はその反対かな。/劇薬と対置するものは漢方薬ではと思いました。毒は論外として。2024/12/13
Aster
53
読んでおいてよかった。ラディカルな主義主張哲学を駆使して現代社会にメスを入れる前に、まず事実として起こったフランス革命について知らなくてはならないと思った。革命は理論においてではなく絶対的に人間によって行われる。でも…少し希望は見えた…革命をするしないではなく、人間の強さというものがしっかり分かったので…2021/04/10
skunk_c
47
副題にあるように、フランス革命の、特に民衆の激しい行動を劇薬と捉え、その作用と副作用を、革命の成果と犠牲になぞらえて語る。また、貴族、ブルジョア、大衆(都市貧民・農民)の3勢力の求めるものをベクトル化し、革命の左右の揺らぎを説明するという理系的手法は斬新だった。確かに分かりやすい。革命前の租税の状況なども詳しく、民衆の生活のイメージが湧いた。ただ、大衆の動きをもう少しポピュリズムと関連付けて欲しい気もする。また、わかりやすさを追求した故か、農民の保守化など革命の多様性がそぎ落とされすぎている印象。2019/09/24