出版社内容情報
死の床に就いた桓武天皇。安定した皇位継承を願う彼の“遺言”は、歴史を大きく動かした。ポスト桓武の時代、血なまぐさい事件が起こるなか、藤原北家は幸運を引きつけ、類い稀な才覚と政治的嗅覚を持つ者たちが、天皇家との関係を深めてゆく。藤原道長「望月の歌」をさかのぼること一五〇年、藤原摂関家はこうして生まれた。
【目次】
序 章 伊予親王事件――摂関家への扉
第一章 桓武天皇の“遺言”――皇権の安定化
第二章 平城天皇の迷い――嫡系継承の放棄
第三章 藤原内麻呂の手腕と苦悩――覇権への道
第四章 真夏と冬嗣――兄弟の明暗
第五章 藤原北家の行く末――内麻呂から冬嗣へ
終 章 藤原摂関家の誕生――南円堂信仰
あとがき
引用・参考文献
内容説明
陰惨な事件がもたらした栄光。親王とその母の死から歴史は思わぬ方向へと動き出す。
目次
序章 伊予親王事件―摂関家への扉
第一章 桓武天皇の“遺言”―皇権の安定化
第二章 平城天皇の迷い―嫡系継承の放棄
第三章 藤原内麻呂の手腕と苦悩―覇権への道
第四章 真夏と冬嗣―兄弟の明暗
第五章 藤原北家の行く末―内麻呂から冬嗣へ
終章 藤原摂関家の誕生―南円堂信仰
著者等紹介
瀧浪貞子[タキナミサダコ]
1947年大阪府生まれ。京都女子大学大学院修士課程修了。文学博士(筑波大学)。京都女子大学名誉教授。専攻、日本古代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
121
藤原北家が摂関家としての地位を固めたのは、従来は人臣初の摂政となった良房の存在が大きいとされてきた。しかし良房の祖父であり歴史的には無名の内麻呂が、恐るべき政治技術を駆使して第一人者となったからこそだった経緯を明らかにする。自分の妻を桓武天皇の側室とし、伊予親王事件では故意に動かず南家を追い落とし、薬子の変で平城上皇に味方した長男を見捨てるなど「そこまでやるか」と思える冷徹な政略で北家のみの繁栄を図ったのだ。権力闘争では陰で立ち回る者が最後に勝つというが、内麻呂の非情な政治哲学は現代にも通じるものがある。2025/11/25
よっち
28
安定した皇位継承を願う桓武天皇の遺言と、類い稀な才覚と政治的嗅覚を持つ藤原北家の者たちが、天皇家との関係を深める藤原摂関家を生み出した過程を解説する1冊。伊予親王事件や桓武天皇の遺言の影響、激情的だった平城天皇と藤原薬子の変などが起きた流れの中で台頭してきた藤原内麻呂の手腕、子の真夏と冬嗣の明暗、内麻呂の死後右大臣となった園人を出し抜いた冬嗣が嵯峨天皇の信任を得ていく様子が解説されていて、藤原四家は独自に動いていたこと、台頭してきた北家の中でも複雑な相克があったことが伺える考察はなかなか興味深かったです。2025/10/28
田沼とのも
19
藤原北家が台頭する契機を、内麻呂の出頭に見出す論考。平城天皇と嵯峨天皇の緊張関係に、天智と天武や、桓武と早良親王といった過去の皇統の兄弟関係との類似性を指摘し、嫡系継承か兄弟継承か、皇統の安定化をめぐっての暗闘があったと指摘する。そのような暗闘の一つである伊予親王事件を契機に内麻呂が目覚ましい出頭を果たしていく。藤原家、北家自身も嫡系継承ではなく、特に北家は冬嗣、兼家、道長など次男三男が後を継ぎ家を隆盛させる傾向があり、なかなか興味深い。令和のあとは、久方ぶりに兄弟継承がみられるのかどうか、、、。2025/12/10
さとうしん
19
著者が岩波新書で出した『桓武天皇』の続編にして、摂関家の祖としての藤原内麻呂とその子冬嗣の再評価の書。ほかにも北家の藤原園人など、知られざる人物を掘り起こしている。また、当時は皇太子に天皇の補佐が求められていたこと、桓武の子の平城、嵯峨、淳和、伊予親王の年齢差の問題、藤原氏は氏族全体としての結束力がなく、藤原四家それぞれが小氏族として活動していたこと、嵯峨の皇后橘嘉智子がその血縁から冬嗣に身内のように見られていたことなど、面白い話題や論点が随所に盛り込まれている。2025/09/25
MUNEKAZ
16
藤原摂関家の興隆の裏には、桓武天皇の「遺言」と藤原内麻呂・冬嗣の深慮遠謀があった!…ということで話としては大変面白いのですが、「~と思う」「~と考える」が連発される内容は、どこまでエビデンスあるのかなと疑問。色々と引っかかる部分はあるが、桓武帝亡き後の政治的混乱の中から、藤原北家がいかにライバルを蹴散らして台頭し、皇室と繋がっていったかがよくまとまっていると思う。冬嗣の兄で平城上皇の忠臣であった真夏、内麻呂亡き後一時的に廟堂の首班となった園人など、あまり知られていない北家の人物の肖像が興味深い。2025/10/16




