出版社内容情報
「奴隷解放の父」として、史上最も尊敬を集めてきた大統領であるエイブラハム・リンカン(一八〇九―六五)。何百万もの黒人奴隷を国内に抱えるなかで迎えた南北戦争という分断の危機において、彼はいかにして「人民の共和国」という統合の理念を構想しえたのか。政治的リーダーシップの源泉を問う評伝。
内容説明
「奴隷解放の父」として、史上最も尊敬を集めてきた大統領であるエイブラハム・リンカン(一八〇九‐六五)。何百万もの黒人奴隷を国内に抱えるなかで迎えた南北戦争という分断の危機において、彼はいかにして「人民の共和国」という統合の理念を構想しえたのか。政治的リーダーシップの源泉を問う評伝。
目次
序章 時代と、運命を背負って
第一章 フロンティアに生きて―一八〇九~四八年
第二章 翼をえた竜のごとく―一八四九~六〇年
第三章 襲い来る内戦と奴隷解放宣言―一八六一~六三年
第四章 「業火の試練」を背負って―一八六三~六五年
第五章 新しい共和国の光と影
終章 伝説化するリンカンと現代
著者等紹介
紀平英作[キヒラエイサク]
京都大学名誉教授。歴史家(近現代世界史)。1946年生まれ。京都大学文学部史学科現代史学専攻卒。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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skunk_c
63
リンカンの生涯を簡潔にまとめた1冊で、最新の研究が盛り込まれ、いわゆる「伝説化」した人物像から離れ、特に南北戦争の苦悩期から平等思想を奴隷解放に高めていったとする過程が読みどころだった。彼の暗殺後、彼の遺志が継がれることなく後戻りしていく姿に、当時のアメリカ社会自体の本質があると思う。著者自身が書いているように、南北戦争中に「なぜ奴隷解放のために命を投げ出さねばならないのか」という厭戦感が北部側に相当あったというのは、戦争の本質を突いていると思う。だから終戦後100年も黒人は差別され続けたのだ。2025/03/08
よっち
21
奴隷解放の父として、史上最も尊敬を集めてきた大統領エイブラハム・リンカン。その政治的リーダーシップの源泉を問う評伝。何百万もの黒人奴隷を国内に抱えるなかで迎えた南北戦争という分断の危機において、彼はいかにして「人民の共和国」という統合の理念を構想しえたのか。その生い立ちから政治家になるまで、合衆国の領土が拡大していく中での政治景観の変化、大統領選挙勝利からの内戦勃発、奴隷解放宣言の決断からたどり着いた新たな国民像とその死。時代背景を踏まえてアメリカとリンカン自身の変化を政治的観点から掘り下げた1冊でした。2025/03/21
MUNEKAZ
13
エリック・フォーナーらの研究を参照しながら、リンカンの生涯を簡潔にまとめる。合衆国を二つに引き裂いた内戦の中で、当初は棚上げしていた黒人奴隷問題こそが分裂の根本だと知覚し、長い葛藤の末に奴隷解放宣言へと至る。リンカンは最初から目覚めている人物ではなかったが、経験から学び、深い思索をめぐらすことで遂に大変革を決断をした。内戦を終わらせるだけならば、いくらでも妥協やごまかしの道があったのかもしれないが、根本からの解決を選んだところにリーダーとしての偉大さがあるように思う。2025/02/27
ジュンジュン
12
僕のリンカン像がまた少しバージョンアップした。小さい頃は「奴隷解放の父」という異名に勝手に英雄視し、学生時代は奴隷解放より国家統合を優先する保守的な政治家像に勝手に失望していた。そして、大人になって触れる生身のリンカンはとても魅力的になっていた。地方議員時代は南部の影響の強い地元に配慮したり、大統領時も異なる意見や利害を調整しながら舵取りをする姿は凄く格好良い。「私は確かに歩くのはのろいが、一旦歩き出したら、決して後戻りはしない事にしている」(反対者から奴隷解放の方針を変えるよう言われた時の台詞)。2025/03/28
山中鉄平
2
リンカン、名前だけは知ってて、もう少しだけ彼のことが知りたくなって読んでみた。身長がやたら高く奴隷解放に尽力し最後は暗殺された人だということを学んだ。ただ理想を口走るのではないリアリストだという印象を受けた。2025/04/26
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