出版社内容情報
SNS等に溢れるあいまい情報に飛びつかず、その不確実性に耐える力が輿論主義(デモクラシー)の土台となる。世論駆動のファスト政治、震災後のメディア流言、安保法制デモといった二〇一〇年代以降のメディア社会を回顧し、あいまいさに耐えられない私たちにネガティブ・リテラシー(消極的な読み書き能力)を伝授する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
54
常々、感じていることであり、考えていることでもある。立ち止まって考える。熟慮・・・・には、ほど遠いレベルだとは思うが、心がけている。メデイア、ネットに溢れる情報に対する捉え方は、書かれていることに近いものがある。2025/02/14
buuupuuu
27
現状の政治は、公共的な議論ではなく、大衆の気分に左右されている。論壇はほとんど影響力を持ったことがなく、メディアは空気や情緒に働きかけている。世論調査がその典型である。このような傾向が行き着く先は、たとえば、統計的手法によって大衆の嗜好を測り、テクニカルにそれを解決していくというような政治かもしれない。著者はこのような状況に問題があると考えている。しかし理性的な公共圏を回復すればよいなどと楽観的になることもできない。著者が提唱するのは、問題解決力や判断力ではなく、あいまい情報に耐える力の涵養である。2024/11/03
にゃにゃころ
15
情報が溢れ過ぎていて、正しいのかどうか調べれば調べるほどわからなくなる沼にハマる。「のちに真偽がわかるという時間解決が多いから、あいまいなままにしておく。すぐに結論を出そうとしないで、我慢して耐える」ことが大事。出どころをきちんと調べて、正しいかどうか判断するっていう時代はもう終わってたんだな。もうひとつわかったことは、世論調査=国民感情調査ということ。日頃世論調査で感じていた違和感の答えはこれだった。現実もネットの世界も瞬時の感情で溢れている。感情的にならず、ひと呼吸おいて、わからないことは喋らない。2024/11/05
かんがく
11
歴史学者としての著者の作品は数冊読んだことがあったが、この作品は時事についての著者の論評をまとめたもの。ただ「時事」といっても民主党への政権交代の頃から始まるので、もはやそれ自体が「歴史」になりつつあり、現在問題になっているネット世論や情報の氾濫などのテーマの萌芽的なものが見れる点が、「時事」の始まりであり、ある程度長いスパンでの「歴史」である。2024/12/12
武井 康則
10
佐藤卓己の近年の論評集をメインに、メディア論を語る。小泉政権から民主党、安倍政権。メディア論として安倍の圧力、コロナもあったが、一番はSNSの影響だろう。大衆の今の気分である世論に反応するファスト政権でなく、将来を見据えた熟考の輿論を、世論と輿論の言葉を峻別し輿論重視の社会をと説く。そのためにあいまいさに耐えろ、ネガティブ・リテラシーを第6章で称揚するわけだが、そもそも輿論など存在するのか、事実事件に即応する時代に、熟考する時間があるのか等著者の意見に同意できないのだが、→2024/09/01