出版社内容情報
古代の中国から伝わった漢字は、日本語の内部に深く入りこんだ。はなしことばを視覚化することを超え、漢字は日本語そのものに影響を与えつづけてきた。『万葉集』から近代まで、漢字に光をあてて歴史をたどろう。漢字がつくるさまざまなかたちを楽しみながら、文字化の選択肢が複数ある、魅力的なことばを再発見する。
内容説明
古代の中国から伝わった漢字は、日本語の内部に深く入りこんだ。日本語を視覚化することを超え、漢字はことばそのものに影響を与えつづけてきたのだ。『万葉集』の時代から近代まで、漢字に光をあてて歴史をたどろう。漢字がつくるさまざまなかたちを楽しみながら、文字化の選択肢が複数ある、魅力的なことばを再発見する。
目次
序章 正書法がないことばの歴史
第1章 すべては『万葉集』にあり
第2章 動きつづける「かきことば」―『平家物語』をよむ
第3章 日本語再発見―ルネサンスとしての江戸時代
第4章 辞書から漢字をとらえなおす
終章 日本語と漢字―歴史をよみなおす
著者等紹介
今野真二[コンノシンジ]
1958年神奈川県生まれ。1986年早稲田大学大学院博士課程後期退学、高知大学助教授を経て、清泉女子大学教授。専攻―日本語学。著書―『仮名表記論攷』(清文堂出版、第30回金田一京助博士記念賞受賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ネギっ子gen
63
【正書法がない言語である日本語において、漢字がはたしている「役割」は多岐にわたり、かつ深い】日本語を視覚化するとともに、言葉に影響を与え続けた漢字。「万葉集」の時代から近代まで、漢字の歴史をたどり、文字化の選択肢が複数あることの魅力を説く書。<日本語の文字化に際してはつねに選択肢がある。選択肢があるのだから、文字化のしかたが一つではない。だから「正書法」はない、ということになる。正書法がないというと、正書法のある言語が優れていて、ない言語はだめな言語と思いそうになるが、そういうことではまったくない>と。⇒2024/12/06
さとうしん
15
漢字・漢語の読みからたどる日本語(彙)論。話は古代→中世→近世と時代順に進んでいくが、各章で議論されるポイントはそれぞれ異なる。個別のテキストの中での字形などの細かな差異に着目した議論が目立ち、「生のテキスト」を丁寧に読むことの大切さを教えてくれる。万葉の頃には日本語を書き表す文字として漢字をどう使うかという試みは一通り終わっていたのではないかという議論や、かな書きの連綿活字の話、近代中国語の取り込みの話などを面白く読んだ。2024/04/27
タイコウチ
11
「正書法がない」とは、「日本語の文字化においてつねに選択肢がある」ということ。無文字社会に漢字が入ってきて(派生的なひらがな、カタカナも含め)文字化されていった日本語の歴史を、単に文字が導入されたとみるのではなく、漢字が日本語(書きことば)をどのように形成してきたかというしくみに注目する。「どのような日本語を文字化しているかということが「読み手」にわかるように文字化していない」という可能性(著者によれば、それが継続している)は、日本語には本質的に非音声的な面があり、それは非ソシュール的な言語観につながる。2024/07/31
ヘビメタおやじ
5
日本語の複雑さを改めて思いました。万葉仮名は苦肉の策ではなく、それまでの文字化の成果という見方に、はっとさせられました。文字を三種類も持っている、それも他国からもらった表意文字を発展させた言語が文字から影響を受けない筈がないでしょう。今でも、我々は漢語を和語に、和語を漢語に、すり合わせ・置き換えながら生活している実感があります。それは、日本語の歴史を受け継いで生きているということなのでしょう。それは、言語の膨らみ・豊かさとも捉えられますが、あやふやさを生んだともいえるかもしれません。メタ視点、大事です。2024/10/12
やす
3
正書法がないということが日本語の大きな特徴だということがわかった。 漢字の捉え方などなるほどと思うことが多かった。2024/07/12