出版社内容情報
『百人一首』は、誰によって、何の目的で作られたのか。長らく藤原定家が撰者とされていたが、著者の最新の研究により、後人による改編が明らかとなった。成立の背景やアンソロジーとしての特色を解きほぐし、中世から現代までの受容のあり方を考えることで、和歌にまつわる森羅万象を網羅するかのような求心力の謎に迫る。
内容説明
『百人一首』は、誰によって、何の目的で作られたのか。長らく藤原定家が撰者とされてきたが、著者の最新の研究により、後人による改編が明らかとなった。成立の背景やアンソロジーとしての特色を解きほぐし、中世から現代までの受容のあり方を考えることで、和歌にまつわる森羅万象を網羅しているかのような求心力の謎に迫る。
目次
序章 『百人一首』とは何か―その始原へ
第1章 『百人一首』に至る道
第2章 『百人一首』の成立を解きほぐす
第3章 『百人一首』編纂の構図
第4章 時代の中で担ったもの
終章 変貌する『百人一首』―普遍と多様と
著者等紹介
田渕句美子[タブチクミコ]
1957年生まれ。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士課程退学。日本中世文学・和歌文学・女房文学専攻。現在、早稲田大学教育・総合科学学術院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
101
百人一首に関する研究書的な感じです。それぞれの和歌については知っていて、この遊びも若いころまではしていたので親近感がありました。しかしながらここに書かれているような奥深い意味もあるのだということもよく知ることができました。「百人秀歌」というのがあり101首の和歌もあるということも初めて知りました。百人一首を題材にした推理小説もあったような覚えがあります。2024/02/17
たま
54
「編纂がひらく小宇宙」という副題が示す如く、百人秀歌と百人一首(ほぼ同じ歌から成るが配列が異なる)を比較し百人一首の「劇化」演出を語る。「このような…演出によって、ある歌、ある歌群は、『百人一首』という舞台の上で、連鎖的にさまざまな声で敗者たちの悲劇や人々の葛藤などを語りはじめるようだ。」最近、平安時代の有名人の恋愛模様や権力闘争に詳しくなっているので、詠まれた状況から切り離し、配列で歌人の生涯をイメージさせる仕掛けを面白く読んだ。バラバラのカルタではなく、声の響きあう詞華集としての百人一首。2024/04/07
hasegawa noboru
19
最近の研究成果だからなのか、たんなる我が身の無知ゆえなのか、合わさってずいぶん新しく知ることが多かった。研究者として当然と言えば当然だろうが、<古典和歌全体の象徴的存在>たる『百人一首』への愛に満ちた一冊であった。<どの一首をとっても、遠い現代に生きる私達の心に響く>。<比類のない輝きを持ち、天性の歌人としか言いようがない>和泉式部の『百人一首』の歌(五六)「あらざらん・・・」は<「この世ではないあの世へ行った私の思い出として、せめてもう一度あなたに逢いたいのです」と訴える。自身を「あらざらん(死んでしま2024/03/11
tyfk
8
3章「『百人一首』編纂の構図」を先に読んだ方が退屈しないかな。百人一首読んでて誰でもなんとなく感じてただろう配列などの意図が明快に解説されている。『記憶の中の源氏物語』にあったような受容史とつながる部分もあり、「聖典」としての評価は江戸時代に確立したようだし、戦後になってからのブームとか、共通点多いかな。2024/02/22
amanon
7
てっきり和歌の解説かと思って手に取ったが、サブタイトルにもある通り、『百人一首』の編纂及び成立のプロセスを解き明かそうとするもの。その概要はある程度知っていた気でいたが、藤原定家と後鳥羽院との愛憎が入り混じった複雑な関係、そしてその定家の時代からずっと降った後に、『百人一首』が世に広まったという事実など、驚きの事実が散見される。それから、これまで多くの国で翻訳されており、また多種多様な『百人一首』のパロディーが出ていることにも驚き。百種の和歌を集めただけのものがこれだけの影響力もつのは、やはり言葉の力か。2024/04/18