出版社内容情報
古代世界において繁栄を極めたローマは、一方では、対外戦争や内乱を繰り返す戦闘姿勢の国家であり、兵士が皇帝位をも左右する軍事体制の国家であった。建国から西ローマ帝国滅亡まで、軍隊と政治・社会との関わりを多角的に追跡、兵士たちの生涯にも光をあてて新たなローマ史を描き、その盛衰をユーラシア史のなかに位置づける。
内容説明
古代世界において繁栄を極めたローマは、一方では、対外戦争や内乱を繰り返す戦闘姿勢の国家であり、兵士が皇帝位をも左右する軍事体制の国家であった。建国から西ローマ帝国滅亡まで、軍隊と政治・社会との関わりを多角的に追跡、兵士の生涯にも光をあてて新たなローマ史を描き、その盛衰をユーラシア史のなかに位置づける。
目次
序章 凱旋門とサトクリフとイエス―ローマ帝国と軍隊
第1章 市民軍から職業軍人の常備軍へ―ローマ帝国軍の形成
第2章 「ローマの平和」を支える―前期ローマ帝国の軍隊
第3章 軍制改革と権力闘争の狭間―変容するローマ軍
第4章 イメージと実態のギャップ―後期ローマ帝国の軍隊
第5章 異民族化の果て―崩壊する西ローマ帝国の軍隊
終章 ローマ軍再論―ユーラシア史のなかで
著者等紹介
井上文則[イノウエフミノリ]
1973年、京都府生まれ。2002年、京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。筑波大学准教授などを経て、現在、早稲田大学文学学術院教授。専攻、古代ローマ史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
123
官僚制が未発達な古代ローマでは、文民の元老院議員が指揮官に任じられた軍隊が軍務以外の行政も担当し、市民権保有者しか入隊できないため軍こそがローマだった。つまり当時のローマは軍と国民が一体化した、理想的な意味での軍国主義国家といえた。しかし帝政以後に職業軍人制を強化すると文民統制が失われ、ローマ市民が兵役を嫌うようになって蛮族を兵士に採用したため内乱が相次いだところへゲルマン民族大移動に見舞われ、西ローマは滅亡した。平和を求めるなら軍事や戦争について知らねばならないと、無知な現代日本人に警鐘を鳴らしてくる。2023/06/11
Nat
38
図書館本。ローマ軍の歴史の変遷がとてもわかりやすく解説されています。おススメです。ローマ軍の衰退から考えた西ローマ帝国の滅亡の状況や、西ローマ帝国と東ローマ帝国の違いにも簡単に触れられていて、納得できるものでした。2024/01/28
サアベドラ
38
共和制での創設から西ローマ帝国における消滅までのローマ軍団の歴史を略述した新書。2023年刊。著者の専門は軍人皇帝時代。内乱を治めたアウグストゥスによって職業軍人による常備軍として各属州に配備され、一定の完成を見たローマ軍であったが、続く政治的混乱を経て内乱や外圧への対応のため中央の機動軍と辺境防衛軍に分離し、機動軍は皇帝の私兵の側面を強める。加えて兵員不足などから同盟部族部隊の比重が高まり、財政的負担に耐えられなくなった西ローマ帝国側の軍団は崩壊へ向かう。断片的なローマ軍の知識の点と点をつなぐ良書。2023/08/02
よっち
37
建国から西ローマ帝国滅亡まで、軍隊と政治・社会との関わりを多角的に追跡、兵士たちの生涯にも光をあて軍事体制の国家としての新たなローマ史を描いた一冊。市民軍から常備軍へと変わっていったローマ帝国軍の形成、軍団と補助軍で構成された前記ローマ帝国の軍隊、軍制改革と権力闘争で変容するローマ軍、東西に分かれた後期ローマ帝国それぞれの実態とギャップ、ゲルマン民族大移動で始まった西ローマ帝国軍の同盟部族軍化・異民族化とその崩壊、東ローマ帝国はなぜ生き延びたのかなど、周囲とも比較しながらの考察はなかなか興味深かったです。2023/04/16
kk
33
図書館本。ローマ帝国の歩みを軍制の変遷といった視点から把握しようとする試み。古代四大帝国の連衡による東西ユーラシア連結がローマ勃興の源であったとし、気候変動等のユーラシアン・インパクトによる交通不良によって国勢が傾く中、これに対するローマの軍事的なソリューションが軍のプロフェッショナル化であったとのご説。軍事制度についてはミクロな説明が多いものの、全体としてスケールの大きなご主張。著者は東洋史の宮崎市定に私淑した由だが、それも納得の論旨。見慣れぬ固有名詞が多いので、索引を附してもらえたらベターかな。2023/04/27
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