出版社内容情報
さまざまな社会集団や権力が併存し、紛争の解決手段としてしばしば暴力をふるう。より強大な力をもつ幕府が、それらを統合・支配しようとする。日本の中世は殺伐とした時代だ。本書は、千年の命脈を現代にまで保つ京都・西京神人に焦点をあて、生業と祭祀を紐帯に、苛烈な世界をたくましく生き抜いた民衆の姿を描く。
内容説明
さまざまな社会集団や権力が併存し、紛争の解決手段としてしばしば暴力をふるう。より強大な力をもつ幕府が、それらを統合・支配しようとする殺伐とした時代。それが日本の中世だ。本書は、千年の命脈を現代にまで保つ京都・西京神人に焦点をあて、生業と祭祀を紐帯に、苛烈な世界をたくましく生き抜いた民衆の姿を描く。
目次
第1章 「西京」の成立―中世京都の空間
第2章 生業の展開
第3章 北野祭と西京神人
第4章 神供奉納と麹業―画期としての「文安の麹騒動」
第5章 武家被官化と戦乱―中世末期の西京神人
第6章 神職と麹業―近世の西京神人
第7章 神仏分離を越えて―近代から現代へ
著者等紹介
三枝暁子[ミエダアキコ]
1973年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。現在、東京大学大学院人文社会系研究科准教授。専攻、日本中世史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
66
京都西京、北野天満宮に属し麹の製造販売に携わる西京神人。本書は北野天満宮の成立から明治を経て現在までの彼らの歴史を追った一冊となっている。歴史小説でよく出る油座のように中世の「座」のように麹に関しては完全に手中に収めていたイメージがあったが、比叡山や幕府との権力関係からそれほど盤石ではなく、むしろ早々とそれを失っていたのは以外。それでも室町時代には北野社に立て籠もったり独自の祭祀を発展させたりと、その歴史は興味深いものばかり。現在でも共同体としての繋がりはあるみたいだし、何と言うか民衆の逞しさを感じれる。2023/01/09
venturingbeyond
33
北野天満宮を本所とする麹座にルーツを持つ京都・西京の神人コミュニティの千年の来歴をまとめた著作。北野天満宮や西京の寺社に伝わる文献記録を元に、中世民衆のバイタリティあふれる姿を生き生きと描く民衆史・社会史の佳作です。中世の神人にルーツを持つ人々が、現在に至るまで、祭祀の継承を中心にコミュニティを維持し、そのコミュニティに著者が知己を得たことで、歴史に登場する人々の姿が、具体的な「顔」を持ち、「生活」を営むリアリティのある存在として現れてくる。“doing history”の言葉がよく分かる一冊。2024/07/18
鯖
25
北野天満宮に属する西京神人からなる共同体が麹の製造販売を独占し、室町幕府と対立したり、彼らのために兵を出したり、伊勢氏(!)に被官したりといった歴史を追った本。近世にもなると麹製造からは完璧に離れちゃってるのに、それまでの権威は生きていて、今につながる瑞饋みこし等として残ってるのが興味深い。じっくりと腰を据えて取り組まれたフィールドワークであり、こういう本がもっと読みたいなあと思った。2022/12/17
浅香山三郎
11
著者には『京都 天神をまつる人々』の著書もあり、この本も買つてあるはずだが、見当たらず。中世の「西京」の住民である北野神人の生業・共同体について、ずいき祭の構造をあきらかにすることで、これまでの日本中世史研究の理解に更に厚みをもたせる試み。西京の事例であるが、中世の社会全般の神と人、権力と地域社会、そして近世におけるその残像のやうなものを考へさせる材料を提示しているやうに思ふ。2023/09/07
不純文學交遊録
11
平安京の北野天満宮領に居住し、酒造りに欠かせない麹業を営んでいた西京神人(にしのきょうじにん)。神人とは神社と結びついた商工業者である。足利義満から酒麹役(酒造業・麹業に対する課税)を免除される代わりに、北野天満宮の神事や祭礼を負担した。麹業の独占権を守るべく、武器を取って幕府軍と戦うことすらあった。朝廷→幕府→新政府と政権は変わっても、西京神人は現代まで続いている。口絵写真の川井家は応仁元年の建築と伝わるが、残念ながら今はもうない。跡地からは室町時代の遺構が発掘されている。2022/12/30