出版社内容情報
青木 健太[アオキ ケンタ]
著・文・その他
内容説明
「テロとの戦い」において「敵」だったはずのタリバンが、再びアフガニスタンで政権を掌握した。なぜタリバンは民衆に支持されたのか。恐怖政治で知られたタリバンは変わったのか、変わっていないのか。アフガニスタンが直面した困難には、私たちが生きる現代世界が抱える矛盾が集約されていた。
目次
序章 政権崩壊
第1章 「失われた二〇年」(二〇〇一~二〇二一年)
第2章 ターリバーン出現の背景(一九九四~二〇〇一年)
第3章 伝統的な部族社会アフガニスタン(一七四七~一九九四年)
第4章 ターリバーン支配下の統治
第5章 周辺国に与える影響
第6章 「テロの温床」化への懸念
終章 内発的な国の発展とは
著者等紹介
青木健太[アオキケンタ]
1979年東京生まれ。上智大学卒業。英ブラッドフォード大学平和学修士課程修了。2005年からアフガニスタン政府省庁アドバイザー、在アフガニスタン日本国大使館書記官などとして同国で7年間勤務。帰国後、外務省国際情報統括官組織専門分析員、お茶の水女子大学講師を経て、現在、中東調査会研究員。専攻は現代アフガニスタン、およびイランの政治・安全保障(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
65
若手の外交専門家によるアフガニスタン現代史とも言うべき本。昨夏のアメリカ撤退後のターリバーン(タイトルと異なり本文では一貫してこの表記)の実権掌握から遡るように状況を見ていく。「通説」が言うようなテロ擁護組織や女性抑圧者としてターリバーンを捉えることなく、歴史的背景からその施策について丁寧に解説している。終章で「内発的な国の発展」をテーマにするあたり、アメリカをはじめとした西欧的価値観による「外からの『改革』」に対する懐疑を感じ好感を持った。自分たちの価値観がどこでも正しいとは限らないことを肝に銘じたい。2022/04/03
サアベドラ
38
2021年8月に再びアフガニスタン全土を掌握したターリバーン政権について、その背景や周囲に与える影響、これからの展望を簡潔にまとめた新書。2022年刊。著者は中東を専門とするシンクタンクの研究員。ターリバーンはそもそもソ連侵攻後の荒廃した国土の世直し運動として始まった背景があり、旧来の部族慣習や伝統的なイスラーム信仰に正当性の根拠を求めているため、良くも悪くもアフガニスタンという国に根ざした政権と言える。時事的な内容なので個々の掘り下げはあまり深くないが、現時点での状況の整理には役に立つ。2022/06/22
崩紫サロメ
29
本書は、近年でのアフガニスタンでの変化を「外部者による体制転換によって成立したイスラーム共和国が、アメリカの支えを失ったことで急速に不安定化し、急所を突くターリバーンが、国境の東側に西域を確保しながら強靱な意志をもとに抵抗を強めたことで、ついに政権崩壊に至った」と総括する(p.182)しかしそのターリバーンは「複数のネットワークから成る集合体」であり、論じる際には「どのターリバーン」について言及しているのか、慎重にならねばならないとする。2022/09/13
Satoshi
18
昨年のタリバンによるアフガニスタン掌握には驚かされた。タリバンを通じてアフガニスタンの近代史を勉強しようと本書を購入した。女性差別はアフガニスタンのパシュトゥン人では一般的であり、その文化とイスラム思想が相まって人権侵害が表だった。タリバンといえども、一概に述べられず、多様である。多民族国家で文明の交差点 となるこの国に平和は来るのか?2022/09/16
ピオリーヌ
17
2021年8月のターリバーンによるアフガニスタン政権掌握は世界に衝撃をもたらした。そのターリバーン台頭の背景に迫る内容。ターリバーンが行う女性の教育や終了の制限はターリバーン独自の物ではなく、多民族国家アフガニスタンの多数派を占めるパシュトゥーン人の部族慣習法(パシュトゥーン・ワリー)を基にしていることも多く、特に農村地帯においては男性有利のパシュトゥーン・ワリーが、人々の行動様式を規定する暗黙のルールとして機能し、影響を与えているという。2001年以降のイスラーム共和国は、アメリカとパキスタン2022/10/09
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