出版社内容情報
約一二〇〇年前に編まれ、古典として親しまれてきた万葉集。しかし実は、ひとつの解釈を拒む歌、よく分からない歌、顧みられなかった歌は数多い。のちの世の評価や解釈にとらわれず、先入観なく歌そのものと向き合えば、古代の人びとの心が見えてくる。万葉集に出会うことで、私たちはほんとうの心に出会うのかもしれない。
内容説明
さまざまな歌にこめられた永遠の心にふれる文学の旅へ。
目次
第一章 さわらびの歌
第二章 「心なきものに心あらすること」―擬人の表現
第三章 「家もあらなくに」―旅人の恋
第四章 柿本人麻呂の狩猟の歌
第五章 笑いの歌
第六章 万葉のこころ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
83
犬養さんや橋本さんの万葉を散歩する本をかなり読んできましたが、この本のように万葉集の解釈(あるいは読み方)の仕方にさまざまな意味があることを知りませんでした。もともと原文が漢字で書かれていてそれをどのように解釈するかで異なってきているということがよくわかりました。また正岡子規などが新しい発見をしたことを知りました。楽しい本でした。2021/10/15
はちめ
11
万葉集全体の紹介という側面も持つが、本書の眼目はなんと言っても著名な作品数首の読み方解釈に関する新たな提案だ。特に柿本人麻呂の、東の野にかぎろひの立つ見えてかえりみすれば月かたぶきぬ、は詠まれている雄大な風景も印象的で、人麻呂の代表作と言ってもいい作品だろう。作者はこの読み方及び解釈に異議を唱えている。異議と言っても純粋な新説を提示しているのではなく賀茂真淵による解釈前の姿に戻すというものだ。専門家による精緻な解釈であり私は反論できないが、本書について他の専門家はどう考えているのか知りたい。☆☆☆☆★2021/09/21
犬養三千代
9
万葉集って知っているようで知らなかった。今の形の成立は、江戸時代中頃とのこと。大伴家持が全部編んだわけじゃなかったのね。写本を幾つも集めて編んで出版できることが 大きな出来事なんだね。 いい時代に生きていて良かったと思う。2022/08/01
belle
5
「いはばしる たるみのうえの さわらびの もえいづるはるに なりにけるかも」。万葉集ではこの歌も含めすべてが漢字ばかりで記されている。万葉仮名と呼ばれる。ひらがなとカタカナの誕生以前。それらの漢字をどう読むかを本書は問い直す。「石激」は「石ばしる」か「石そそく」か。万葉集の魅力を語りながら、読みかたについて考察する著者の熱い思いは伝わる。第6章万葉のこころでは時間を越え人々の喜びや悲しみをあらためて感じることができた。そして私自身「いはばしる」や「ひむがしの」の歌は慣れ親しんだ読みをこれからも。2021/09/23
ぽん
4
字の読み方を探り、歌の解釈を改める。賀茂真淵とかが唱えた通説がこうして更新されてくのかという、探究的な面白さがある。それは教科書に載った名歌を書き換えてしまうことでもあるけれど、それも万葉集の魅力なのだろう。古今集等に比べて本が多いのはこういうこともあるか/長歌を五七で区切って読むのは何気に初めて知ったんだが/第6章好き。中国古典やその後の時代と比べつつ、万葉集の想像力を示してくれる。「踏まれる土になりたい」はやべーな。2021/10/17