出版社内容情報
すべての子ども,そして保護者のために
内容説明
ワンオペ育児、産後うつ、他の子どもと接する機会の少ない今の子どもたち…。家族の形も変わるなか、「孤独な育児」が日常化している。保育所やこども園は大きな支えになるのに、育休中の退園ルールや保育所建設反対はなぜ起きるのか。現場を長年取材した著者が各地で直面している課題を明らかにし、今後に向けて提言する。
目次
1 子育ての現場で何が起きているのか(保育所に入れない;退園をめぐる対立の幕開け;弁護団や市の幹部の思い;立場を超えた悩み)
2 社会のなかの保育園(保育所が作れない;リエさんの「孤独な育児」体験;家庭保育室への“飛び火”)
3 孤独な育児(子育ての孤独と産後うつ;課長の発見;二年目のひずみ;保護者達の声)
4 未来に向けて(保育制度のための請願;見えてきた可能性;三年の総括;“育休退園”での教訓と、これからの課題)
おわりにかえて―未来を拓く保育
著者等紹介
榊原智子[サカキバラノリコ]
読売新聞東京本社教育ネットワーク事務局専門委員。1988年上智大学大学院博士課程前期修了(国際学修士)。同年読売新聞社入社。政治部、解説部などを経て社会保障部次長、調査研究本部主任研究員。2019年から現職。現在、政府の少子化社会対策大網検討会などの委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
79
いわゆる「三歳児神話」や「母性神話」に苦しめられる母親や、現役世代とその上の世代とでの育児認識の乖離がこれほどまでに大きいものかと驚いた。その乖離こそが現代日本を育児を行いにくい社会にし、少子化を促進してしまっているのではないか。また個々人の中でも育児に対する観念や収入による格差、保育園と幼稚園に対する考え方は異なっている。難しい問題だが、時代とともに子育てが個人的な問題ではなく社会的な問題へ移行していくことを願うばかりだ。2019/11/26
ゆう。
34
所沢の保育園での育休退園問題などから、育児の社会性について考えることができる一冊。非科学的な三歳児神話などのおかしさを考えることができる。子どもたちに等しく保育が保障されることは、親の育児の孤立化を防ぐことにもつながる。新制度の評価は同意できないが、勉強になった。2020/01/04
崩紫サロメ
20
現代日本の少子化の背景となっている「孤独な育児」の現状について、具体的な事例・訴訟などを取り上げて紹介する。中心になるのは育休を取得した場合に保育園から退園を告げられるというケースである。これには「子どもは母親といるのが幸せ」という神話や「もっと困難な状況にある母親がいるのに」などの認識があるが、そのような認識が母親も子どもも社会からの孤立に追い込み、「孤独な育児」を生み出しているという。2022/09/08
てくてく
11
育児は母親任せで大丈夫、地域との助け合いでどうにかなる、といった実情に合致しない考えを持つ人が保育に関わらる行政側に存在してしまっている事、育児や教育に十分な投資をすることを避け続けてきた日本社会の問題を再確認する上で参考になる本だった。子どもにとって保育園での生活、特に同世代と力いっぱい遊ぶことができる環境の維持が大事なのだということを大半の人が理解するようになるにはどうするべきなのだろうか。2020/01/04
鳩羽
8
所沢市の育休退園や、隠れ待機児童問題。子ども・子育て支援新制度が導入されたのに、サービスが充実するどころか退行することになったのはなぜか。いくつかの事例のインタビューや展開から、その原因が税の公平分配にかこつけた古い育児観にあることが明らかになっていく。キーワードは育児、保育の社会化だ。産後うつなど孤独な育児が起こす問題があり、保育園が母親の唯一のコミュニティとなることも珍しくない。幼児期から教育を受けることの大切さからも、家庭の事情で選別するのではなく、全ての子供に保育が開かれているのが重要だと思う。2020/01/06