出版社内容情報
先秦から南宋まで、社会の重層性にも着目しつつ、栄えゆく「海の中国」をダイナミックに描く。
内容説明
ユーラシアを見わたせば、中国は、北は草原世界、南は海域世界へと開かれている。第二巻では、長江流域に諸文化が展開する先秦から、モンゴルによる大統一を迎える南宋末までの長いスパンで「海の中国」を俯瞰。中原との対峙・統合を重ねながらこの地域が栄えゆく姿を、社会の重層性にも着目しつつダイナミックに描く。
目次
第1章 「古典国制」の外縁―漢以前(長江流域の諸文化;「楚」の血脈 ほか)
第2章 「古典国制」の継承―六朝から隋唐へ(南からみる『三国志』;江南の「中華王朝」 ほか)
第3章 江南経済の起動―唐から宋へ(運河と海;文臣官僚の時代 ほか)
第4章 海上帝国への道―南宋(金・モンゴルとの対峙;江南の繁栄 ほか)
第5章 「雅」と「俗」のあいだ(俗―地域社会の姿;雅―士大夫のネットワーク)
著者等紹介
丸橋充拓[マルハシミツヒロ]
1969年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。専門は中国隋唐史。現在、島根大学学術研究院人文社会科学系教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
126
この岩波新書の新中国史の本は本当に今までにはない感じのものです。1巻では中原を中心に8世紀半ばまで記されていましたが、この巻では江南、海域を中心に13世紀ごろまでを俯瞰しています。やはり中国というところは地域が広いために1国での編年体方式の歴史書では細かいところなどを書いていけないということなのでしょう。この本は非常に読みやすくまたさまざまな工夫も凝らされており全5巻となるようですが今後の中国史の基本的文献となるのではないかという気がします。2020/04/21
skunk_c
54
シリーズ2巻目。前巻が通説に対する疑問というちょっと堅いテーマを中心にしていたのに対し、本書は海洋国家としての中国に焦点を当て、また、その流動性の高い社会構造や、中央統治が末端の社会に強く及ばず、言ってみれば放置状態であることなど、現代中国に通じる面を強調しており、現代を見据えた歴史としてとても面白かった。例え話は学生相手のように結構くだけており、また日本の同時代を常に意識しているのも、中国史への興味を引こうという著者の思いの反映のようだ。このシリーズ、新しい中国通史のスタンダードになり得る。次が楽しみ。2020/03/27
サアベドラ
34
新書中国史第2巻。本書では中原で成立した「古典国制」に取り込まれつつ、華北と異なる「船の世界」を独自に展開していく江南地域の歴史をたどる。2020年刊。著者の専門は隋唐経済史。制度や組織の込み入った記述が中心だった前巻に比べ、江南を軸に官と民の世界を対照的にかつ具体的に描く本書は、一般読者に配慮した記述スタイルもあってかなり読みやすくなっている。少々概説的なのが気になるが、政治経済に文化、さらには民衆の動きにまで言及し、そこから現在の中国社会のルーツを見出すところまで話を進める手際の良さに感心。2020/03/09
coolflat
26
長江流域周辺の中国の歴史(~南宋まで)を描く。中国は歴史において、華北を中心とする「大陸国家」とみなされているが、六朝や南宋など、「海上帝国」としての性格を持つことも本書からよくわかる。79頁。北朝由来の田制や税制制度は、一般農民に対する一律の田上支給と税役賦課を規定しており、貴族の大土地所有を前提に設計されてきた江南社会には馴染みにくい。唐代中期、内外の情勢が混迷を深めるようになると、唐朝は北朝起源の原則を転換し、貧富の差を前提とした募兵制と両税法を採用する。こうした変化を「唐の南朝化」と呼んだ。2020/10/25
まえぞう
25
シリーズ第2巻は江南の発展の歴史です。随分前にベトナムを訪れた際に、政治のハノイと経済のホーチミンを感じましたが、中国も同じですね。3巻で予定される北方遊牧民の進出は、ベトナムにとっては進入してくる中国ということになるのでしょうか。次巻が楽しみです。2020/01/30