内容説明
「短篇小説を書こうとする者は、自分の中に浸みこんでいる古臭い、常識的な作法をむしろ意識的に捨てなければならない」。その言葉どおりに数かずの話題作を生み出してきた作家が、ディケンズら先駆者の名作を読み解き、黎明期の短篇に宿る形式と技法の極意を探る。自身の小説で試みた実験的手法も新たに解説する増補版。
目次
1 短篇小説の現況
2 ディケンズ「ジョージ・シルヴァーマンの釈明」
3 ホフマン「隅の窓」
4 アンブロウズ・ビアス「アウル・クリーク橋の一事件」
5 マーク・トウェイン「頭突き羊の物語」
6 ゴーリキー「二十六人の男と一人の少女」
7 トオマス・マン「幻滅」
8 サマセット・モームの短篇小説観
9 新たな短篇小説に向けて
10 ローソン「爆弾犬」
11 筒井康隆「繁栄の昭和」
著者等紹介
筒井康隆[ツツイヤスタカ]
1934年大阪に生まれる。同志社大学文学部卒業。作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
129
約30年前に出版された本を1章書き加えて出版されたものです。私は読んでいるのですがすっかり忘却の彼方でした。岩波文庫に収められている海外作家の短編をえりすぐって開設されたものです。今回は岩波文庫には入っていないごじぶんの短編を最後に収録されています。解説というか作るに際しての舞台裏話なのでしょう。2019/10/27
佐島楓
73
長編を読んでいても、短篇を読んだことがない作家が多く、勉強になった。いくつか小説は書いたが、中編より長編、長編より短編、さらに連作短編(これはまだ書いたことはない)の順でハードルが上がっていく気がする。自分の武器を見つけて磨いていくしかない。2019/09/06
HANA
63
ディケンズやホフマン、ビアスといった名だたる小説家の短編を解読しテクニックを分析した一冊。既読は「アウル・クリーク橋~」と「繁栄の昭和」だけなのだが、分析の手腕というか各短編の読みどころが抑えられているため、講義であると同時に上質の紹介でもあって、紹介された短編を片っ端から読みたくなる。特に著者の自家薬籠中の物としているドタバタ、ローソンの「爆弾犬」の紹介の巧みさは特筆もの。分析を読んでいるだけでも笑いが抑えられなかった。短編小説を書く指針として書かれたものであるが、読むコツとしても参考になるなあ。2019/11/04
いっち
45
著者が短編を解説する。とりあげるのは、「模倣不可能であり、だからこそ短篇小説作法のお手本にとりあげられることがなかった」作品。著者の理想とする短篇小説は、「誰にも真似られることのない」「独特な形式も技法も、ただその短篇小説にしか通用しない」「独特な形式と技法がそのテーマや内容によってしか生かされず、他のいかなるものにも応用のきかない」作品。そのためには、「それまでに書かれた小説や同時代の小説をいやというほどたくさん読み、それに飽きあきしなければならない」と言う。飽きたから今までにないものを書くという算段。2020/12/12
山田太郎
42
張本がテレビで偉そうに話すのは腹立つというか不快感漂うけど、大物然として腹立たないのは本人に自覚があるというか第三者的な視点があるからというかそれでも時々暴走したりするのは芸というか。難しい文芸理論もなんとなくわかった気がするような語り口というかそういうのは頭いい証拠でやっぱりすごいなと思った。2019/10/16