出版社内容情報
子どもに場当たり的ではない,自信のある対応をするために.長年の研究成果から見えて来た確かな知識とは.
高橋 惠子[タカハシ ケイコ]
著・文・その他
内容説明
「育児は母の手で」「三つ子の魂百まで」「「ママがいい」に決まってる」…。根強くまかり通る育児神話や「通説」。それに翻弄される多くの養育者たち、とりわけ母親たち。子どもは何を訴えているのか、さまざまな仕草はどのような発達の表われなのか?発達心理学の長年の研究成果をもとに、確かな知見を平易に伝える一冊。
目次
第1章 心の発達―三つ子の魂百までか(生涯発達の中の幼児期;「三つ子の魂百まで」の誤り ほか)
第2章 母親の神話―「愛着」の心理学(愛着理論の登場;愛着の質 ほか)
第3章 幼児の人間関係―子どもからの報告(人間関係とは;人間関係の仕組み ほか)
第4章 わたしが主人公―自己主張と自制心(自己とは;幼児期の自己の発達 ほか)
第5章 子どもと社会―「あなたの子どもは、あなたの子どもではありません」(日本の子育ての現状;子どもを養育する環境 ほか)
著者等紹介
高橋惠子[タカハシケイコ]
1940年東京生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒業、東京大学大学院教育学研究科(教育心理学専攻)博士課程修了、教育学博士。現在、聖心女子大学名誉教授。専攻は生涯発達心理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
56
発達心理学の最新の知見をもとに、従来の子育て神話を切り崩している。私の母は、私を入れる保育園を探しているときに役所のひとに「私だったら子どもをこんなところに預けませんけどね」と言われ傷ついたそうだ。その頃の母にこの本を読ませたいと思った。子育てをしているすべてのかたへのエールなのだ、この本は。2019/02/25
ほし
17
本著では、幼児期の生育環境が人生に決定的な影響を与えるという幼児期決定説や、子どもの愛着の重要な対象は母親だけだとする母性神話を、様々なデータをもとにして誤りであると断じます。それはつまり、子どもの成長の全てを母親の責任にすることには、大いに誤りがあるということです。そのうえで、子どもをひとつの自己をもった他者として認め、社会全体で育てていくべきだとします。デンマークで出産直後に配られるパンフレットに記載されているという、「あなたの子どもは、あなたの子どもではありません」というフレーズが心に残りました。2019/06/12
武井 康則
8
子育てに母親は欠かせないのかという考察から入る。実験検証から乳児、幼児も含め、子どもは多彩な人間関係を構築し、その場面ごとに必要な人の役割を求める。子どもが多くの人々と出会える場こそ子どもの成長に不可欠だが、子育ては母がするものという子育て神話が母たちを苦しめる。確かに子どもの施設を作るより、自分の子どもを育てよとイデオローグするほうが安い。そしてそれは貧困家庭にも及んでいく。かくして公正な福祉は失われる。代わりに平等な福祉を実現してるというが、それが欺瞞であるのは本書にあるイラストがわかりやすい。2019/05/21
Takao
6
2019年2月20日発行(初版)。「三つ子の魂百まで」や「母性神話」などの誤りを心理学研究の成果を用いて正している。「愛着」の提案者ボウルビィや、アイデンティティのエリクソンなどのエピソードが興味深かった。エリクソンはフランクフルト生まれで、母親はユダヤ系オランダ人、養父は小児科医で、実父が誰か生涯教えられなかったという。自分の出自に悩んだエリクソン自身が「アイデンティティ」を必要としていたのだ。心の発達、愛着、幼児の人間関係、自己主張と自制心、子どもと社会の5つのテーマで書かれている。2019/04/13
みさと
4
子育ての知恵を、子育てについて筋道を立てて考え判断する能力と定義して、発達心理学の知見から様々な提言をしていく。同時に、「世間の常識」に対する闘いを仕掛ける。「育児は母の手で」「ママがいいに決まっている」という通説に対し、科学的実験に基づく具体的なデータを用いて根拠がないことを示し、母親が育児のすべてを背負わなければならないとする考え方を問い直す。さらに、こどもの成長にとっての望ましい環境の実現は、家庭の責任・自己責任としていては改善され得ないことを説く。タイトルからは想像できないハードな内容であった。 2019/04/22