出版社内容情報
ひたすら待ち遠しかった人も、逆に強制された苦痛の時間だった人もいるはず。貧困、災害、運動、教育、世界という五つの視覚によって、明暗二つの顔を持つ給食の制度や理念、思想の背景に迫り、今後の可能性を探る。
内容説明
学校で毎日のように口にしてきた給食。楽しかった人も、苦痛の時間だった人もいるはず。子どもの味覚に対する権力行使ともいえる側面と、未来へ命をつなぎ新しい教育を模索する側面。給食は、明暗が交錯する「舞台」である。貧困、災害、運動、教育、世界という五つの視覚から知られざる歴史に迫り、今後の可能性を探る。
目次
第1章 舞台の構図
第2章 禍転じて福へ―萌芽期
第3章 黒船再来―占領期
第4章 置土産の意味―発展期
第5章 新自由主義と現場の抗争―行革期
第6章 見果てぬ舞台
著者等紹介
藤原辰史[フジハラタツシ]
1976年、北海道旭川市生まれ、島根県横田町(現・奥出雲町)出身。2002年、京都大学人間・環境学研究科中途退学。京都大学人文科学研究所助手、東京大学農学生命科学研究科講師を経て、京都大学人文科学研究所准教授。専門は農業史。著書に『ナチスのキッチン』(水声社、河合隼雄学芸賞、2012、2016=決定版、共和国)、『ナチス・ドイツの有機農業』(柏書房、日本ドイツ学会奨励賞、2005、2012=新装版)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Willie the Wildcat
91
救済と食育。政治に翻弄される需給両関係者。法制度だけで現実の凹凸全てを網羅するのは無理難題。故に問われる法の心と、人の心。先割れスプーン問題や残飯問題など、試行錯誤も心次第。日米余剰農作物処理の結晶「ソフト麺」もお気に入りの一品。一方、某元首相の「給食は母親の手抜き」発言など、母親の資質を問う発言群には違和感。私の母は生涯働いていた。Give mom a break!なお、著者が最後に問いかける質問。大人の都合も多少は致し方無いが、子ども目線で”昼食”に一票!給食、良くも悪くも集団生活の思い出かな。2019/06/19
molysk
90
子どもの頃に学校で食べていた給食。大人になって改めて見直すと、給食には二面性がある事に気づかされる。大人の子どもに対する押し付けであり、同時に子どもにとって魅力的なものでもある。給食の始まりは、貧困と災害から子どもを救い出すことが目的であった。一方で、戦前は富国強兵、戦後はアメリカの食文化輸出という側面もあった。近年は経費節減の圧力を受けながらも、より良い味と栄養のため試行錯誤が続く。昨今、貧困対策としてはこども食堂が注目を集めるが、毎日栄養に優れた食事を提供する給食の位置づけは見逃せない。2022/07/05
佐島楓
73
給食が戦前から存在していたこと、センター方式の問題点など、知らなかったことがたくさんあり、非常に興味深かった。給食が子どもの学校生活に寄り添えるものであってほしいと思う。2018/12/03
ゆう。
50
学校給食について歴史的背景や現代的問題も含め、とても丁寧に研究された内容だと思います。給食には教育的意味合いと福祉的意味合いがあります。本著ではそもそも給食は貧困問題に対応するために始まったが、スティグマを生み出さないためにどうすればいいのかということを考えてきて作られた制度であることがわかりました。またそれが共産主義との関係で常に問われていたことや今日では新自由主義との関係で仕組みそのものが問われていることもわかりました。給食は無償化すべきですが、なぜ子どもたちに必要なのか学ぶことができました。2019/02/07
樋口佳之
48
朝から早く 学校で/PTAの おてつだい/真心こもる 給食を/共にいただく 昼餉どき/みんなで思う 父母の恩/おいしい給食 ありがとう/この歌は知らなかったけど,同じような事は何度も先生から聞いた記憶が。だから給食が親への感謝を減ずる云々話は全く理解出来ないです。/給食にまつわる視野の広い議論を学べたと思います。2019/03/16