出版社内容情報
近代世界のグローバルな人流や、日本・中国などアジア系移民の歴史経験に着目して、「移民の国」アメリカ合衆国のなりたちと理念をとらえる。トランプ政権下で揺れ動く〈いま〉を考えるためにも求められる、歴史的視座。
内容説明
アメリカ合衆国は「移民の国」―誰もが口にするこの国のかたちは、どう形成され、いかに変貌してきたのか。移民を近代のグローバル・ヒストリーのなかに位置づけるとともに、日本や中国などアジア系移民の歴史経験に着目して、アメリカ史をとらえなおす。揺れ動く“いま”を考えるためにも求められる、歴史的視座。
目次
序章 「移民国家」アメリカの二つの顔
第1章 アメリカはいつ「移民国家」となったのか?
第2章 中国人移民と南北戦争・再建期
第3章 「国民」を管理する
第4章 日本人移民と二つの世界大戦
第5章 アジア系アメリカ人の戦後
終章 アジア系移民の歴史経験を語り継ぐ
著者等紹介
貴堂嘉之[キドウヨシユキ]
1966年、東京生まれ。1994年、東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退。現在、一橋大学大学院社会学研究科教授。専攻:アメリカ合衆国史、人種・エスニシティ・ジェンダー研究、移民研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
81
そもそもネイティブ・アメリカン以外アメリカ人は全員移民じゃないのか、という疑問から読んだ本。国が人種的に不安定であると、統率するための理念が必要となり、その結果差別が生じるという悲劇と皮肉に胸が痛くなった。現米大統領のことは理解できないし、どんな理屈をこねられたところで看過できる言動は皆無だが、歴史を知ることには意義がある。ただ、人種関係なく人間はなぜ他者を排斥するようにできているのか。差別の本質的な構造ということに学問的な関心があるので、自分で勉強してみたいと思う。2018/11/01
藤月はな(灯れ松明の火)
77
「移民の国」という成り立ちからなる理念からどんどん、外れていっているアメリカ。しかし、アメリカの歴史を紐解くと如何に自分たちの民族間での結束を高めるために他の民族を脅威に思い、下に見なしてきたかが、分かる訳で。本書は中国系や日系など、アメリカでの人種差別の問題では光すらも当てられていなかったアジア圏の移民たちの歴史について紐解いてる、まさに画期的な本だと思います。奴隷としての長きに渡る不当な扱いから踏ん張り、世界市民として認められるまでの道程に敬礼。そして今の日本にとっても決して他人事でもないのだ。2018/11/30
skunk_c
31
ちょうど仕事で取り上げている内容なので自分にとっては極めてタイムリー。著者は高校世界史教科書の編纂もやっていて、この問題が取り上げにくいとのことだが、地理では必須。アメリカはこれ抜きには理解できないからだ。本書は特にアジア系(中国・日本・戦後)をメインに、奴隷禁止・解放や、19c末からの帝国主義時代といった世界情勢との関連を重視した、グローバル・ヒストリーのケーススタディとして書かれたそうだが、その試みは的を射ていて成功していると思う。アメリカの人種主義的遺伝子は、結局現大統領にも引き継がれているようだ。2018/10/27
さとうしん
21
日系・中国系といったアジア系移民の扱いを中心に見る「移民国家」としてのアメリカの歴史。20世紀初め頃まで「白人」概念にかなりゆらぎがあったこと、マイノリティ側の抗議が政府によって承認されると、それが人種差別を克服した「国家再生」の物語として回収されるというワナがあるという指摘など、読みどころが多い。日系移民が戦時中の自分たちの経験を踏まえて、近年アラブ系移民に救いの手を差しのべる運動を展開しているという話には救いを感じる。2018/10/25
まえぞう
17
移民の国としてのアメリカを、普段取り上げられる大西洋を越えた白人(ヨーロッパ)と黒人(アフリカ)からではなく、太平洋を渡ったアジア人、主として中国人と日本人からみて議論が展開します。9.11の後、イスラム系排除の行き過ぎに対抗してきたアジア系アメリカ人の役割を再認識しました。2023/06/10
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