出版社内容情報
無実の人が自白に落ち、犯行内容を語ってしまう、そしてかつての自白を撤回する。体験したものにしかわからないその過程はどういうものか。虚偽自白を見抜き、自白という人証を逆手に取り、無罪を勝ち取る道筋を示す。
内容説明
無実の人が自白に落ち犯行内容を語ってしまう。そしてかつての自白を撤回する。体験した者にしかわからないその過程はどういうものか。足利事件、狭山事件、袴田事件(清水事件)、日野町事件、名張事件を実例に、虚偽自白を見抜き、むしろ、冤罪の温床にもなってきた自白を逆手に取り、無罪を勝ち取る道筋を示す。
目次
第1章 虚偽自白とはどういうものか(自白で立ち上がる事件;足利事件と虚偽自白を読み解くための理論)
第2章 自白への転落―足利・狭山・清水事件(わずか一日での転落;長期間の取調べの果てに ほか)
第3章 自白内容の展開(無実の人の「語れなさ」;犯行内容が語れない ほか)
第4章 自白の撤回―自白を弁明するとき(自白の維持からその撤回まで;かつての自白をどう弁明するか)
著者等紹介
浜田寿美男[ハマダスミオ]
1947年香川県に生まれる。1976年京都大学大学院文学研究科博士課程修了。現在―奈良女子大学名誉教授・立命館大学客員教授。専攻―発達心理学および法心理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こばまり
47
もし、あなたかあなたの大切な人が重大事件の謂れなき被疑者として勾留される事態になったら「あなたには私がいる。信じて待っているから」と思いを強く共有して臨み、心理的な操作に屈せず、まずは目安となる23日間を乗り切るしかない。本当に恐ろしい。2022/04/17
skunk_c
37
憲法の「身体の自由」を教えるときに必ず触れるのが「無罪推定の原則」、つまりグレーでは処罰してはならないということだが、実際の刑事捜査は、強い「有罪への確信」が働いており、そこに巻き込まれた無実の者は孤立無援となって「自白」し、自ら犯罪のストーリーを創作していくことになる。その内容は逆行的で、調書に書かれていない記録や録音では、逡巡したり語れなかったりする痕跡があるのに、調書ではすべて切り落とされ、それが裁判に用いられる。「賢いハンス」など興味深い話も多く、裁判員制度の中で多くの人に読んでもらいたい書。2018/09/15
香菜子(かなこ・Kanako)
31
虚偽自白を読み解く。浜田寿美男先生の著書。無実無罪の人を精神的に追い詰めて虚偽自白させるようなことは絶対にあってはならないこと。虚偽自白や冤罪は人の人生を劇的に変えてしまう。社会全体として虚偽自白や冤罪は決して許さない、虚偽自白や冤罪をさせるような捜査関係者や警察関係者を強く批判するといった姿勢が必要だと思います。2018/09/28
ねお
21
無辜の自白が虚偽と見抜けない人々は、人間の本質的な社会性、それゆえの人間の弱さを知らない。冤罪の最大の原因は、裁判官を含めた法律家や警察署が、無辜による虚偽自白の理由や虚偽自白の心理的過程を知らないことにある。捜査段階の身体拘束及び取調べの長さは、無罪だと主張しても、誰も信じてくれないという無力感や絶望を引き起こしやすい。裁判官なら真実を発見してくれるだろうと妄信し、刑罰が現実味を持たないのに対して、孤立無援の状態や身体拘束から解放されたいという現実的な衡量は一般的の人々にとって合理的判断となってしまう。2021/04/04
那由田 忠
19
最近は判決で、浜田教授の自白分析が証拠採用されることもある。警察や検察が犯人だと根拠ない思い込みで追及すると、信じてもらえない無力感で虚偽自白に追い込まれ(真犯人は無力感がない)、必死に犯人を想像して事実を知らない中で話をつくる。警察や検察のチェックで事実に近づくが、それは犯人が正直に語り始める過程と見えてしまう。暴力的脅しがなければ「自白」を信用するという前提を変えねばならない。証拠なき確信で自白を迫るのは日常的にも起こりやすい。プロは冤罪を防ぐため、もっと推定無罪の考えを徹底せねばならないだろう。2019/05/23