出版社内容情報
All for God──激しいうねりのなかを生きたこのキリスト者は、自らの弱さを知るからこそ、つねに敬虔であろうとした。『余はいかにしてキリスト信徒となりしか』『代表的日本人』等の著作に今も響きつづける、その霊性を読み解く。
内容説明
All for God―「不敬事件」、妻と娘の死、非戦、無教会、再臨と、激しいうねりを生きたキリスト者、内村鑑三。彼は、自らの弱さと不完全さを知るからこそ、どこまでも敬虔であろうとした。同時代の人々を惹きつけ、『余はいかにしてキリスト信徒となりしか』等の著作に今も響きつづけるその霊性を、深みにおいてとらえなおす。
目次
序章 回心
第1章 入信
第2章 死者
第3章 非戦
第4章 再臨
第5章 訣別
第6章 宇宙
著者等紹介
若松英輔[ワカマツエイスケ]
1968年新潟県生まれ。批評家・随筆家。慶應義塾大学文学部仏文科卒。「越知保夫とその時代 求道の文学」にて第14回三田文学新人賞評論部門当選。『叡知の詩学 小林秀雄と井筒俊彦』にて第2回西脇順三郎学術賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
90
キリスト教の真の意味を誰よりも深く理解し、ひたむきに生きた内村鑑三の生涯を浮かび上がらせる素晴らしい評伝。若松さんらしい真摯な洞察に満ちており、キリスト教に基づいた日本的な霊性について理解を深められる。尊ぶものがイエスと日本という内村鑑三の姿勢が素晴らしい。日本人は年齢を重ねると日本的なものに帰っていく傾向がある。それは悪いことではないが、西洋の文明の精髄であるキリスト教の恵みから目をそらすのはもったないことだ。十字架上のイエスという逆説な存在を、これほど深く理解していた人物がいた事に畏敬の念を覚えた。2018/04/06
Gotoran
59
内村鑑三の思想と言葉を読み解きながらその生涯を辿った良書。回心、入信、死者、非戦、再臨、訣別、宇宙というキーワードを章毎にして、読み手の胸に迫るような著者の巧みな文章で綴られている。内村にとっての基督教が、弟子たちとの濃密な交流を辿る中で、霊性を浮き彫りにしていくことで見出されていく。人間的には不完全だった内村の元を去っていった多くの弟子たちや師弟の逸話が興味深かった。基督教に対して自分なりの信念を持って生涯を貫いた内村鑑三の魅力を旨く引き出している著者の文章に魅了された。2021/06/27
ネギっ子gen
45
【All for God】不敬事件、非戦、無教会、再臨と、激しく生きたキリスト者・内村鑑三。彼は、自らの弱さと不完全さを知るからこそ、どこまでも敬虔であろうとした。今なお多くの人を惹きつけ、響き続けるその霊性を捉え直した書。「あとがき」で、<「読む」とは、それを字義的に解釈することよりも、言葉をもたらした者であるキリストと向き合うことに他ならない。目に映る文字は、そうした霊性の旅の道標だったといってよい。道標の前で止まっていてはならないのだろう。それはいつも、沈黙のうちに行くべき道を指し示している>と。⇒2021/12/29
禿童子
32
若松英輔さんは人物の評伝を書かせると一級の腕前だと感嘆します。内村鑑三という「偉人」のイメージを塗りかえることに成功しているのでは。最初の妻は離縁、二番目の妻は病気の内村を献身的に看護したあとに急逝。三度の結婚で生まれた娘は19歳で夭折。祈りが届かないという絶望の後に死者の臨在、キリストの再臨という信仰の深まりを見い出すという見方は、奥様を亡くされた若松さんの共感から来るのでしょうか。弟子との訣別に見る内村の難しい人間性。日本独特の「無教会」キリスト教運動を理解する新しい切り口が示されたように思えます。2018/05/05
内藤銀ねず
25
群馬県人だったら誰でも知っている、「心の灯台」内村鑑三。ただ何をした人かと訊かれると、ほとんどの群馬県人は知らないのです。この偉人はクリスチャンなので、例えば学校教育で扱って生徒が信仰に目覚めちゃったりしたら大変なことになるからです。こうして扱いに困ったあげく名前だけは知られている偉人にさせられた内村鑑三の思索を、丁寧に現代へよみがえらせた労作。お気に入りさんから若松英輔さんの存在を教えてもらい、たまたま買ってあったこの本の作者が若松さんだったので大いに驚き、かつ一人で盛り上がってしまいました。2018/03/27