内容説明
深刻さを増す人手不足の問題、また入院期間短縮化と在宅化が急速に政策的に推進される中で、ひずみをもろにかぶっている看護の現場ひいては患者の置かれた実態に、定評ある著者が鋭く切り込む迫力のルポルタージュ。看護の最前線で、いま何が起こっているのか。本来の看護とは何か、多職種によるチーム医療とは何かを問う。
目次
第1章 看護の質の劣化(「よくあの時、患者さんが死ななかった」;思うような看護ができない ほか)
第2章 姥捨て山の時代がやってきた(私の仕事は「追い出し屋」;「たらい回し」の仕組み ほか)
第3章 真のチーム医療とは何か(チーム医療の促進で、救命率が大きく変わった;周産期医療における多職種連携 ほか)
第4章 あるべき看護の姿とは(「特定行為に係る看護師の研修制度」;「いつ事故が起きても不思議ではない」 ほか)
著者等紹介
小林美希[コバヤシミキ]
1975年茨城県生まれ。水戸第一高校、神戸大学法学部卒業後、株式新聞社、毎日新聞社『エコノミスト』編集部記者を経て、2007年よりフリーのジャーナリスト。若者の雇用、結婚、出産・育児と就業継続などの問題を中心に活躍。2013年、「「子供を産ませない社会」の構造とマタニティハラスメントに関する一連の報道」で貧困ジャーナリズム賞受賞。著書に『ルポ 正社員になりたい』(影書房、2007年、日本労働ペンクラブ賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kotte
11
小林美希さんは看護、保育、雇用の分野に強い方で、本書も期待通りに読み応えのある本でした。なぜ看護の質の維持が危ぶまれる事態に陥っているのかがよくわかります。2017/06/10
てくてく
8
命や医療の現場に関するルポを発表している小林氏の新作。医師不足、さらに看護師不足が言われて長年が経過し、大学の定員は増やされているにもかかわらず、その不足が解消できない原因としての、現場の問題を明らかにしている。医師ではない看護師ならではの患者や家族への寄り添い、ということができなくなっている現状、離職率の高さ、そして何よりも安心して入院や医療ケアを受けることが難しくなっている問題を再確認した。さて、こちらは看護学科の学生に勧めても良いものだろうか。でも、読んでほしいと思った。2016/10/28
amanon
6
本来、人の命を預かる仕事であった筈の医療看護が人の命を管理処理する仕事になってしまったのではないか?と思わされた。少子高齢化による医療費の逼迫はよくわかるが、だからといって、経済的効率が優先されて、患者や現場にいる人間の命や尊厳が蔑ろにされていいわけではない。それなのに状況は大手病院に都合が良い方向に流れている…そうした中でも、前向きにこの状況に取り組み、良い結果をだしている医療機関も紹介されているが、ごく僅か。目先のことだけに捕らわれるのではなく、長期的な視点に立っての医療行政の必要性を痛感する。2019/08/07
KYOKO
5
著者の講演を聞いたことがあるけど、粘り強い取材と科学的な分析に基づいていてとても納得させられた記憶があります。 やはりこの本も同様でした。 医療現場の労働強化の背景に診療報酬などの制度の問題があるという指摘。 労働組合として、対病院との交渉でできることもあるが限界もあるなあと考えさせられました。2016/08/26
ぷほは
4
手堅い記者の仕事ではあるが1、2章で問題の要因とされたことが3章で成功の要因とされるような箇所がいくつかあり、同じ問題を形式合理的/実質合理的に恣意的な線引きを行っているようにも思えた。が、情報量は確かに豊富で勤務形態の正循環ー逆循環の規制などは知らなかったし、特定行為や准看護師をめぐる専門性の変容はマクロなレベルでもミクロなレベルでも多くの論点を含むものだというのは良く分かった。これをキャッチーなフレーズで投げるのみならず、きっちりアジェンダ化して議論をするための土台作りなどは社会学でも貢献できるはず。2018/08/26
-
- 洋書
- KALEIDOSCOPE
-
- 和書
- 会社をどこから変えるか?