内容説明
熱波や大雪、「経験したことがない大雨」など人々の意表をつく異常気象は、実は自然な変動の現れである。しかし将来、温暖化の進行とともに極端な気象の頻度が増し、今日の「異常」が普通になる世界がやってくる。IPCC報告書の執筆者が、異常気象と温暖化の関係を解きほぐし、変動する気候の過去・現在・未来を語る。
目次
第1章 異常気象
第2章 地球の気候はどう決まっているか
第3章 気候変動の過去と現在
第4章 二一世紀の地球はどうなるか
第5章 日本の気候はどうなるか
第6章 気候のティッピングポイント
第7章 気候変動の影響―緩和策と適応策
著者等紹介
鬼頭昭雄[キトウアキオ]
1953年大阪府生まれ。京都大学大学院理学研究科地球物理学専攻博士課程退学、理学博士。気象庁気象研究所気候研究部部長を経て、2013年5月より現職。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第1作業部会第2次~第5次評価報告書の執筆者を務める。現在、筑波大学生命環境系主幹研究員。専攻は気象学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翔亀
43
地球温暖化ブームから10年もたたないうちに話題になることも少なくなった。定着化したという事かもしれない。そうした中で毎年騒がれているのが異常気象だ。これは間違いなく温暖化のせいだ、いや逆ではないか、とよく判らないけど心配は増すばかり。本書は、異常気象と温暖化の関係を丁寧に解説しながら、同時に最新のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)五次報告の紹介書にもなっている。判ったことは気象を含めた地球環境が複雑なことだ。太陽、大気、海、生態系等々が複雑に絡み合って、微妙な均衡が図られ、人間は生かされてきた事。↓2016/04/09
壱萬参仟縁
33
異常気象:過去に経験した現象から大きく外れた現象。人が一生の間にまれにしか経験しない現象(2頁)。COP21パリ会議で妥結したようだ(書いているのは昨年12月13日現在)。ヒートアイランド現象:土地利用、高層化、人口排熱の影響で発生(18頁)。惑星アルベド:反射エネルギーと到達エネルギーの比(反射率41頁)。エルニーニョ(南方振動現象:太平洋赤道域の中央部からペルー沿岸海域で海面水温が平年比で高くなり、半年から1年程度続く現象(54頁)。2016/02/03
skunk_c
11
IPCC報告書作成に携わった著者が、地球温暖化と異常気象の関連について概説したもの。その評価は抑制的で、危機感を煽るような書き方ではないが、古気候学の見地などから、地球の気温の周期的と言える変動の中で、CO2の量が多くなると地球が寒冷化しないことや、この100年で4度の気温上昇があると、かなり危機的な状況になると説く。原因は化石燃料燃焼などによるCO2増大を上げている。最近10年の気温上昇の停滞などもきちんと論じており、危機を煽るような書き方でないことに好感が持てた。気候のメカニズムも詳しく説明している。2016/05/17
あんさん
10
正直なところ、空気中の0.03〜0.04%しかないCO2が地球温暖化の原因と言われてもピンと来ていなかった。しかしながら99%を占める温暖化には関係ない窒素や酸素を除くと、それなりの割合になることに、ようやく気がついた。著者はIPCC作業部会に長年携わった方。判明している内容を誠実に提示していると感じる。提言に対して私達にできることは限られているのかもしれないが、少しでもやらないといけないと思わせられる。2024/08/25
くものすけ
9
IPCCの報告書作成にも関わっていたという気象専門家の淡々とした語り口による著作。決して熱く語ることはなく極めて客観的な事実、研究結果が述べられていきます(初めて聞く基礎的内容も多く、大変勉強になる事が盛り込まれています)現在の人類の置かれた立場は、例えは悪いですが、「沸騰直前の鍋の中のカエル」同然、大変な事態が近い将来待ち受けている事を全員が知った時点では既に茹であがっている!この事態は絶対に避けたい。地球という”鍋”から飛び出す事は不可能なので、即座に火を止めなければなりません。CO2排出削減必須! 2024/10/28