内容説明
学校の戦後史は、実社会との関係史である。民主主義社会の担い手づくりを、高度成長を担う人材育成を、低成長時代に入ると新自由主義とグローバル化への対応を求められてきた学校は、その過程で生じた子どもとの乖離によって内側から揺さぶられている―現在の論点を、戦後七〇年のスパンで捉え、次世代の課題を見据える。
目次
序章 就学・進学動向からみる戦後―学校の受容と定着
第1章 「日本の学校」の成立―近代学校の導入と展開
第2章 新学制の出発―戦後から高度成長前
第3章 学校化社会の成立と展開―経済成長下の学校
第4章 学校の基盤の動揺―一九九〇年代以降
終章 学校の役割と課題―戦後学校制度の再考
著者等紹介
木村元[キムラハジメ]
1958年石川県に生まれる。1990年東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。専攻は教育学・教育史。現在、一橋大学大学院社会学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆう。
37
学校というものが社会との関係でどのように位置づけられてきたのかを戦後史とありますが、戦前からみていった良書だと思います。戦後の教育は、民主憲法の下で民主主義的人格形成を目指すことが示され、そのための民主社会の担い手を教育によって行うとされそのための制度として学校制度がつくられました。中学校までの義務教育制度はそのための権利としての教育を国家が保障するためのものです。しかし高度経済成長その後の新自由主義的社会のなかで学校は権利としての教育保障から乖離してきます。その流れをこの本では学べました。2018/09/14
きいち
33
自分の体験に引きずられがちな学校観。でも、世代はもちろん、都会と田舎、いや隣の学区でも取組みによって実は大きく違う。自分の首に絡まる先入観の鎖をほどいてくれる落ち着いた通史。貴重だ。◇当時世界では稀だった単線型の中学校義務教育化が、戦後すぐになぜ実現できたのか?明治以来の歴史が踏まえられることで、1941年の国民学校以来の連続性が明らかになる。「外から持ち込まれた戦後民主主義教育」という右翼も左翼も共有してる認識がいかに嘘っぱちの神話であることか。◇学校は学校だけ見ていてはわからない。世の中との関係次第。2015/10/18
マグカップ
20
本書には、戦後(戦前も含む)から現在に至るまでの、学校と社会の関係史がまとめられている。時代の流れに沿って、その在り方や存在意義が問われてきた学校。社会の要求に対応するだけではなく、子どもが学校に来て学ぶことや学級をどのような場所にするかなどの視点を盛り込み、学校の枠組みを再編していくことが重要であるということがわかる。学校の歴史をザッと知りたい人におすすめの一冊。2021/09/11
とうゆ
15
戦前から現代にわたる、近代学校の変化を学ぶことが出来た。戦後の学校制度は、GHQによって一方的に創られたものだと考えていたが、日本側の意見も盛り込まれるなど、戦前からの学校制度と分断されたものではないというのが、意外だった。教科書的な本なので、読み物としての面白さはない。2015/10/17
シルク
13
新制中学校とか特設道徳導入とか、中教審とか学習指導要領とか、それが「試案」から「告示」になって、拘束性が増したとか。。。教師としては知っとらないかんことばかりだが、正直「チェーイ、分かったような分からんような、要するに面白くねぇな!」。。と、わたくしは思ってた項目ばかりの本。そうは言ってもちゃんと分かってなねぇ、と、かったるくこの本を手に取った。そしたら面白かった。。特にわたくしには、1958年の特設道徳導入に関する記述が興味深かった。「戦争に突き進む日本を作った元凶たる、悪名高き『修身』の復活」とて、→2022/08/16