内容説明
災害復興においては、その長い過程で新たな問題が生じ、被災者を悩ます。そして、災害常襲国である日本の備えはまだまだ貧弱だ。阪神・淡路大震災から二〇年。その痛恨の教訓は生かされず、今また「復興」の名のもとにもたらされる災害が東北を覆っている。次の復興災害をどう防ぐのか、多くの災害現場を見てきた著者が提言。
目次
第1部 復興の二〇年―阪神・淡路大震災のいま(創造的復興と復興災害;孤独死;借上げ公営住宅からの退去;新長田駅南地区再開発)
第2部 東日本大震災―いまとこれから(東日本大震災復興の枠組み;住宅復興とまちづくり;復興予算の流用)
第3部 阪神・淡路、東北から“次”への備え(混線型住宅復興;東日本大震災以後;次への備え)
著者等紹介
塩崎賢明[シオザキヨシミツ]
1947年生まれ。立命館大学教授、神戸大学名誉教授。都市計画・住宅政策。京都大学大学院工学研究科修了。日本住宅会議理事長、兵庫県震災復興研究センター共同代表理事、阪神・淡路まちづくり支援機構共同代表委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
30
英語でReconstruction Disasterだが、元はピーター・ホールが1980年に計画災害という本があるようだ(ⅴ頁)。貝原俊民氏が創造的復興を成熟社会にふさわしい復興を成し遂げるとしていた(4頁)。復興公営住宅の最大の問題はコミュニティ崩壊(10頁)。孤独死とは、社会的に孤立した果ての死で望まない無念の死(21頁)。復興は生き残った被災者の生活を立て直すことに最重要な課題がある(61頁)。災害公営住宅の被災者は高齢化。慢性的な空き家となり、自治体の負担が嵩む(108頁)。 2015/02/02
ゆう。
24
一日でも早い復興をと言われる中で、いつまでも孤独死はなくならず、街づくりは進まない。こうした被災者を置き去りにしている施策のなかで生じる問題を、筆者は「復興災害」と名付け、問題提起をしています。本著は、阪神淡路大震災で生じている「復興災害」と東日本大震災で生じている「復興災害」を取り上げながら、真の復興は何かを考えるものとなっています。生業の復興が求められているにも関わらず、政府は復興という名の新たな開発をしようとしている矛盾。声が届かず、住宅を確保することも自己責任とされている矛盾。考えさせられました。2015/02/19
おさむ
17
阪神大震災から20年が過ぎても変わらぬ災害対策の実態を都市計画の専門家が分析。東日本大震災復興基本法に「活力ある日本の再生」という目的がさらっと盛り込まれ、予算流用が可能になった。持ち家と借家、原発事故の有無という阪神とのGAP。そして、手本である米FEMAがテロ対策にかまけて災害対策が疎かになってしまった悲劇を考えると、地に足のついた議論を重ねていく必要がありますね。2015/06/13
niisun
15
発災後から仕事で復興のお手伝いしている身としては非常に考えさせられる内容でした。大規模自然災害そのものの被害ではなく、その後の復興の取り組みの未熟さや杜撰さによる人為的二次災害。阪神・淡路大震災後に生まれた言葉のようですが、1923年の関東大震災時も国はほとんど頼りにならなかったようですし、何しろ、終戦間近の1943年の鳥取、1944年の東南海、1945年の三河、1946年の南海の巨大地震の際など、国は情報統制までして発生の事実を隠しており、頼りになるどころか・・・という感じすしね。 2015/02/01
どら猫さとっち
9
東日本大震災からもうすぐ4年を迎える今年。今も復興には問題を抱えている。そして20年を迎えた阪神・淡路大震災は、復興は一部だけで、まだできていないところもある。復興はおろか、災害常襲国の日本の予防対策は備えも不充分だ。では、どうすればいいか。本書を読んで、復興の現実的な悩みやその解決案を知っておくべきではないか。特に政界の人たちは必読である。まだ震災は終わっていない。この現実を、どれぐらいの人たちが見ているだろう。2015/03/01