内容説明
中央アジアを大きく蛇行する大河アムダリヤ。古来あまたの文明・文化がその岸辺で交差し、盛衰を繰り返してきた。その実像は、この半世紀、国際調査団によって、ようやく明らかにされつつある。若き日彼の地に魅了され、齢九十を超えて今なお現地で発掘調査に携わる著者が、青銅器時代からヘレニズムまでを視野に最新の研究成果を紹介する。
目次
序章 中央アジアの浮気な大河アムダリヤ
第1章 砂漠の風に消えた古代遺跡群―青銅器時代のアムダリヤ流域
第2章 「死ぬときは悔ゆることなかれ」―ヘレニズムの都市遺跡アイハヌム
第3章 アムダリヤに響くフルートの音―タフティ‐サンギンのオクス神殿
第4章 宗教改革ツァラトゥストラ―オクス神殿とゾロアスター教
終章 ヘレニズムの運命―シルクロードと中央アジア
著者等紹介
加藤九祚[カトウキュウゾウ]
1922年朝鮮に生まれる。1953年上智大学文学部ドイツ文学科卒業。専攻、北・中央アジア文化史。現在、国立民族学博物館名誉教授・創価大学名誉教授・ロシア科学アカデミー名誉歴史学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
34
92歳になられる著者の中央アジア紹介。ここに紹介される遺跡については、日本からはやはり遠い彼方の世界である。冒頭のアムダリヤ川の紹介記事自体が、別世界へのいざないのように読める。驚くべきは中央アジアにギリシア、ヘレニズムの文化が浸透していたことと、ゾロアスター教の影響がみられること。文明の十字路にはやはりいくつもの文明が複合して存在したのである。ますますシルクロード世界への興味がわいてくる。2014/04/29
壱萬参仟縁
25
アラル海のアラルは、島の海(22頁)。 92歳の名誉教授の先生なので、 専門的過ぎてよくわからない。 だが、現代のシュリーマン『古代への情熱』 という感じはする。 月姫という意味のアイハヌム遺跡(77頁)。 図書館があったようだ(90頁)。 理由は2枚のパピルス断片が発見されたことから。 書かれていた文字は、1枚はアリストテレス哲学の対話。 いま1つは、詩のテキストという。 92頁の劇場の写真からすると、 ローマ帝国の影響を受けていたのは、 素人でもわかる。 2014/04/06
びっぐすとん
22
108円本。数年前、新聞で著者が亡くなられたと知ったが、中央アジア並びに他国の研究者への敬意が所々に感じられる内容。残念ながら専門的過ぎて単なるシルクロード好きの理解の範疇を越えているが、中央アジアがアジアに止まらず、ギリシアの影響も強く受けており、まさにユーラシア大陸の要であり、文化の坩堝であったことは理解出来た。ギリシア人もはるばるここまで植民していて凄いけど。人類の祖先が出アフリカ以来、世界に広がるのに時間が掛からなかったDNAが、この地から先日見た正倉院の宝物を奈良まで伝える原動力となるのかな。2019/10/26
吟遊
17
古代中央アジアに着目。それもアムダリヤ河を軸にして見ていく。大河の周辺にある遺跡の解説、出土品、そこにみられるヘレニズムの影響。バクトリアの方までギリシア文化がかなり浸透していたこと。さらにゾロアスター教と宗教改革者ツァラトゥストラ。ややマイナーな話題がたくさんで楽しめる。2018/04/10
崩紫サロメ
12
中央アジアにおけるヘレニズムの変容を、アイハヌム、タフティーサンギン遺跡を中心に調査している。あとがきには本書で取り上げられた研究者の簡単な紹介もある。著者は1922年生まれでここで挙げられているような大家と同世代で、興味深いエピソードも紹介されている。中央アジア、特にバクトリアに興味がある人にはよき入門書となるだろう。残念ながら2016年に著者は亡くなり、これが最後の著作となった。最後までウズベキスタンで発掘調査をされていたとのこと。敬意と哀悼を表する。2019/09/13