出版社内容情報
李白と並び称される唐代の詩人・杜甫(712-770).名門の家に生まれたが,苦労してなった地方官僚の職をわずか4年で辞め,貧困の中で放浪生活を送った杜甫は,社会や現実を凝視して,苦難を乗り越える意志を力強くうたう詩を遺した.その悲惨な生涯をたどりながら,世界との
内容説明
李白と並び称される唐代の詩人・杜甫(七一二~七七〇)。名門の家に生まれたが、苦労してなった官僚の職をわずか四年で辞め、貧困のなかで放浪生活を送った杜甫は、社会や現実を凝視して、苦難を乗り越える意志を力強くうたう詩をのこした。その悲惨な生涯をたどりながら、世界との抗いを生々しく描いた代表作を読み解く。
目次
第1章 諸国を漫遊する
第2章 官をめざして
第3章 漂泊の旅暮らし―成都まで
第4章 成都にて
第5章 再び漂泊の旅へ―長江を下る
終章 評価の変遷と文学の特色
著者等紹介
川合康三[カワイコウゾウ]
1948年浜松市生まれ。1976年京都大学大学院博士課程中退。博士(文学)。東北大学文学部、京都大学文学部を経て、京都大学名誉教授、台湾大学招聘教授。専攻、中国古典文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
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21
杜甫は悲惨な生涯の中で絶望に沈むことなく希望を抱き続けた。詩は実人生との深い関わりでつくられるため年齢と共に成熟すると言われる。若い時、朝廷から追放された李白との出会いは杜甫にとって大きい。人は自然と対等で一体に存在することで人本来のあり方を実現できるという理念を抱く杜甫。詩に「はじる」という意味の字が多い。今の自分は満開の花に対してみすぼらしいと心が乱れることもあったが、それでも自然と向き合い続けた。そして杜甫も李白も大地の上で死を迎えた。作品が遺されたのは放浪中にずっと運び続けたから。詩が人生だった。2020/01/26
S.Mori
14
詩聖と呼ばれる杜甫の生涯と作風の変化を解説した本です。苦労が多く救いのない人生だったことが分かります。下っ端の役人の仕事は窮屈になってやめてしまい、日々の食事も事欠く状態。でもあらゆる意味で革新的な詩を書き続けました。貧しさとか兵役で家族を失う心の痛み、自然に投影させた自分の心情など。現在の詩では当たり前の主題ですが、杜甫が生きていた8世紀には散文的と思われることを臆せず詩にしました。とてつもなく大きな家を作り、そこに貧困に苦しむ人達を招きたい、と書く優しさが何とも言えず好きです。2020/06/29
さとうしん
13
杜甫の詩を読み解くというよりは、詩から杜甫の人生を読み解くという方向。才気煥発だったらしい少年時代、李白への半ば片思いのような敬慕、そして諧謔をまじえて描き出される窮乏と流浪。詩を切り出された断片として読むのではなく、詩人の人生という文脈から読む面白さを教えてくれる。2020/09/17
もち
8
詩をまじえながら、わかりやすく杜甫の人生を辿った本。中学生の頃から『杜甫ノート』などを熟読されていたことに驚いた。2017/02/14
鴨の入れ首
1
2012年刊。図書館本です。李白と並んで中国唐代(盛唐)最大の詩人ある杜甫の生涯を辿り、その作品世界に触れる漢詩解説書です。戦乱に翻弄され、時代の転換期を生きた杜甫の内面に迫る興味深い本でした。人生の苦労と弱者への共感など様々な経験が漢詩芸術に昇華されていく様子は、まさに詩聖杜甫の凄みを感じました。とても面白かったです。2025/03/16