出版社内容情報
日本人と外国人では認識や思考のあり方は異なるのだろうか。「前・後・左・右」のない言語の位置表現、ことばの獲得が子どもの思考に与える影響など、興味深い調査・実験の成果を紹介しながら語る。
内容説明
私たちは、ことばを通して世界を見たり、ものごとを考えたりする。では、異なる言語を話す日本人と外国人では、認識や思考のあり方は異なるのだろうか。「前・後・左・右」のない言語の位置表現、ことばの獲得が子どもの思考に与える影響など、興味深い調査・実験の成果をふんだんに紹介しながら、認知心理学の立場から明らかにする。
目次
序章 ことばから見る世界―言語と思考
第1章 言語は世界を切り分ける―その多様性
第2章 言語が異なれば、認識も異なるか
第3章 言語の普遍性を探る
第4章 子どもの思考はどう発達するか―ことばを学ぶなかで
第5章 ことばは認識にどう影響するか
終章 言語と思考―その関わり方の解明へ
著者等紹介
今井むつみ[イマイムツミ]
1989年慶応義塾大学大学院博士課程単位取得退学。1994年ノースウェスタン大学心理学部Ph.D.取得。現在、慶応義塾大学環境情報学部教授。専攻は認知科学、言語心理学、発達心理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
102
「異なる言語の話者は、世界を異なる仕方で見ているか」という問いを実験データに基づき、科学の視点から考え直す。本書で示唆されるのは言語を習得すると無意識的のレベルで言語処理をし、現実認識を言語の側に歪めるというフィルターとしての性質。意味のないことに意味をつけ境界線のないところに線を引く人間の性向は言語獲得により飛躍的に多様化した。発達や心理学の分野にも直結する数々の実験は何れも興味を唆られる面白味があり、まだまだ詰める余地のありそうな普遍化の課題も深遠だ。下手な参考書や啓発書より他言語への関心が湧くかも。2024/11/21
おたま
75
これまで読んだ同著者の『言語の本質』や『英語独習法』のさらに基本にある言語に対する考えを書いた本。「ことば」が人間の思考にとって、いかに根底的なモノであるのかを教えてくれる。しかも、それを哲学的な議論ではなく、実験科学として提示しているところが、これまでの言語と思考に関する本より一歩踏み込んでいる点だろう。私たちが、何かを認識するとき、私たちは必ず「ことば」を使い、母語のフィルターを用いている。ことばが異なる時、すでに知覚や感受の次元にまで及んで差異は生まれる。つまり、「ことば」が違うと、⇒2024/10/17
けんとまん1007
71
言葉というものへの関心・拘りが、年々、強くなってきている。同じ言葉であっても、通じ方にかなり違いがあることを痛感する日々。知識・経験からくるものもあるだろうが、生活環境や文化からくる違いも大きいということがわかる。一つの言葉を理解するにしても、家庭環境や学習環境、体験してきたことの違いが、思考や行動様式にまで関わること、確かに、述べられていることから納得するものがある。今おgは、そこに、デジタルとアナログの違いも加わるのだろうと思う。2022/12/18
1959のコールマン
43
☆4.5。タイトルは「ことばと思考」だが、著者が本書で述べているように、言語が思考を決定するか否か、異なる言語の話者が異なる思考をしているか、という問題に結論付けすることは避けている。それより外国語を学び、使うことの重要性を語っている。外国語と母語での世界の切り分け方の「違い」を意識することは外国語の上達の上で重要だが、母語を効率的に処理するシステム自体がその「違い」を分かり辛くしてしまう。だが、それを乗り越えて外国語を習熟することにより、母語とは別の視点から世界を見る事が出来るようになる、と著者は書く。2019/08/17
Nobu A
31
久々の良書。いや、珠玉の書。サピア=ウォーフ仮説を命題にした本は数冊読んだことがあるが、本著は別格。先行研究を丁寧に俯瞰し緻密に分析、そして犀利な考察。ウォーフ仮説を検証するだけでなく、新たな価値を見出す。最後は外国語学習の意義に繋げ、筆者の回答に感銘すら覚える。様々なことが頭に浮かぶ。中間言語分析が全盛の中、言語比較分析から学ぶことはまだまだ多い。幼児の言語発達過程は神秘的。子育て、特に3歳ぐらいまでは学びが多い至福の時。今井むつみ著書初読。2010年発刊。今井先生の最新刊「英語独習法」に触手を伸ばす。2021/03/17