内容説明
金正日体制の北朝鮮をどう見るか。核開発、後継者、食糧難、そして市場化の模索…。韓国の専門研究者らが、豊富な情報をもとに、この「政治過剰」の国の現状と今後を包括的に、冷静な目で考察する。南北関係のゆくえ、経済改革の明暗から犯罪の変貌、若者らの新しい価値観まで、「未来志向」の立場でリアルに伝える貴重な一冊。
目次
序章 北朝鮮の実像を知るために
1 政治・外交編(パワーエリート―改革勢力は存在しないのか;主体思想―棚上げされる公式イデオロギー;先軍政治―対米対決時代のレトリック ほか)
2 経済編(経済改革―「計画」に「市場」をプラス;経済特区―点から線へ、面へ?;配給制―供給不足で正常化は困難 ほか)
3 社会・文化編(文学―変化を反映する作品と理論;都市化―上からの動き、下からの動き;医療―機能せぬ無償制度、急がれる刷新 ほか)
著者等紹介
石坂浩一[イシザカコウイチ]
1958年生まれ。現在、立教大学経済学部准教授。専攻=韓国社会論、日韓・日朝関係史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アーロン
6
まず驚いたのが、北朝鮮と韓国が同一民族であるにも関わらず、国のあり方に様々な違いがあることだ。そして、北朝鮮という国の実状を知ることができた。例えば、配給制や無償治療制度などが印象的だった。実際にはすでにほとんど機能していない制度があるが、内状は徐々に変化しつつある。家父長制や映画への規制なども同じようなことが言える。僅かずつだが、良い方向へと向かっているようで、希望を感じた。特に周辺国がこのような現状を認識することが大事だと思った。2019/04/09
牛タン
4
韓国の北朝鮮研究者による雑誌連載記事を和訳したもの。政治、経済、社会についてあわせて30タイトルくらいを各分野の専門家が語る。10年前の情勢だが、知らないことだらけでとても面白かった。政治では金正日の先軍思想が色濃く、経済は'02年の七・一措置以降市場経済が緩和されてきており、社会では韓国や西洋文化の影響が拡大しつつあるとのこと。人道援助や開発援助は体制維持を図る政権の利益になると見るか、改革・解放の一助となると見るか難しいと思った。2019/02/15
nagata
1
およそ10年前の北朝鮮社会を描いたもの、とはいえ学者の「客観的視点」では皮膚感覚にはやや遠い気もする。それでも、「いま」を知る基点の1つにはなろうか。2019/01/19
たけふじ
1
「いま」とはいえ執筆は2006年なのでキムジョンウン体制にもなっていなければチャンソンテクが処刑されてもいない。だが、北朝鮮の体制の根幹部分であるチュチェ思想や先軍体制については現在にも通じる部分であろう。訳者解説にもあるが、考えていたよりも北朝鮮の民はしたたかであり、それに合わせて党も対応を変えている部分もあるのだろう。しかし、国家の状況が芳しくないことに変わりはない。市場化導入によって安価な政府管理価格がはねあがり、餓死者が出る。インフラが整っていないから生産がおぼつかない…ソ連の末期と同じ状況だ。2015/11/20
キングオブ読書
0
約10年前、金正日時代の話 韓国の北朝鮮研究者からの比較的客観視した執筆2017/03/16