内容説明
古事記、日本書紀、風土記などに載っている上代の神話・伝説は、日本霊異記、今昔物語など平安時代以降の説話とはまったく違う特徴をもっている。スサノオノミコトの大蛇退治等の神話・伝説を読みながら、音の連想や書き手・聞き手の想像力がストーリーに反映する、その特徴を明らかにし、豊かな口承の世界の深層に迫る。
目次
序章 神話・伝説の生まれた時代
第1章 想像力が伝承を生み出す
第2章 伝承の世界を読む(須佐之男命の大蛇退治;三輪山の神が見そめた美女;常世の国から橘を持ち帰った男;謀反を起こして死んだ夫婦;天界の支配者と地上の支配者)
第3章 伝承の深層を探る(神を捕まえて来た男;父の失敗をつぐなった息子;鏡の呪力が蘇らせた男;父の遺骨を探し求めた兄弟)
終章 神話・伝説の変容―上代から中古へ
著者等紹介
佐佐木隆[ササキタカシ]
1950年青森県に生まれる。1981年学習院大学大学院博士課程単位取得退学。専攻は古代日本語学・古代文献学。学習院大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はる
10
単純に神話・伝説に興味があって手に取ったけれど、口承からなる古代の伝承について詳しく書いてあり、視野が広がった気がします。2020/02/10
kogoty
4
文字のなかった頃(時代)のことを、後世に伝えていくには、言い伝え(口伝)に拠るしかない。そうやって残してきたものも永い年月には少しずつ変容せざるをえなかっただろう。その変容の痕跡を”音”を頼りに紐解いていく。という視点にとても興味を持ったのだけれど、なんだかはぐらかされているような印象が最後まで抜けなかった。繰り返される類似の音によりイメージが重層化されている、といった説明になるほどと思い同時に抱く、それがどういったことなのかを知りたい気持ちの持って行き場が見つからない。知識不足というのは悔しいものだな。2016/02/24
misui
4
無文字の口承時代から記録時代へ、話し言葉から書き言葉に移行する過程で伝承がどのような作用を受けたかを、記紀・風土記を元に検証する。口承においては和歌で言う掛詞のような形でイメージの重複や連想・想像が働いたとし、文字化によるイメージの固着を経たのちに、やがてその重層的な意味も理解されなくなって後世の説話に繋がっていく。2009/11/09
くむちゃん
2
「琴は特別に神聖な楽器であり、神を呼び寄せる力能をもつもの」。「高い場所に登って自分の支配する国土を見渡しながら、目に見える国土のすばらしさを褒め称えるという、古い「国見」「国讃め」の儀礼。そこを支配する神の霊威が高まり、国土に豊饒と繁栄がもたらされる。天皇が地方へ行幸した場合にも、その地その地で国見・国讃めの儀礼を執り行う。よいことをすればよい結果が生まれるのだ、という言霊信仰の一つのあらわれ。」2015/02/17
李孟鑑
2
古事記など原初的な神話の成り立ちを、「音」から解いたもの。語彙の「音」が変化することで人名や地名、物語が変化し発展していったとの指摘は興味深いものがあります。記紀、風土記などは長い口承の時代を経て成立したのですから、そうした性質はもっと注目されてよいと思います。例えば娯楽として繰り返し語られたならば、マンネリ化を避けて変化がつくことは当然考えられますし、そしてその場合、音の変化は語りの中で即興的に生じたという想像も成り立ってきます。古代の人々の精神が垣間見える一冊です。2014/09/09
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