内容説明
バブルとその後の長期不況、深まる政治不信、そして高まる社会不安。列島が酔いしれた高度成長の夢のあと、何が待ち受けていたのか。崩れゆく冷戦構造のなかで、この国は次第に周回遅れのランナーとなっていったのではないか。六〇年代半ばから現在まで、政治・経済・社会・家族…すべてが変容し崩壊していく過程をたどる。
目次
第1章 左翼の終わり
第2章 豊かさの幻影のなかへ
第3章 家族は溶解したか
第4章 地域開発が遺したもの
第5章 「失われた一〇年」のなかで
第6章 アジアからのポスト戦後史
著者等紹介
吉見俊哉[ヨシミシュンヤ]
1957年東京都に生まれる。1987年東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、東京大学大学院情報学環教授。専攻は社会学・文化研究・メディア研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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k5
77
同時代史が面白くなるのは中年の一症状かと思うのですが、その背景として、40を過ぎると政策や社会制度というものの威力が分かって来るから、かも知れません。たとえば「女性が活躍できる社会」といくら叫ぼうが、保育園が十分なければ全く無意味なわけで。円高と低金利がバブルや、海外投資による産業の空洞化を招いたというテーゼや、列島改造論をはじめとすると国づくりのドラマトゥルギーなど、読み応え満載です。ところでコロナ以降、都市の再デザインが議論されるのかなあと思いますが、今のところ政府からのネタはワーケーションだけかな。2020/08/23
coolflat
14
高度経済成長末期以降(=ポスト戦後期)を扱っている。内容は社会史中心で、連合赤軍・ベ平連・ウーマンリブ・沖縄の反米基地闘争・水俣病など公害病訴訟といった社会運動にスポットを当てているのが目新しい。ポスト戦後において、自民党の保守政治は、池田の「所得倍増」〜田中の「列島改造」までの福祉国家型の利益配分政治から、中曽根〜小泉までの「民活」と「規制緩和」を軸にした新自由主義的なポピュリズムへと変身する。この政策転換は、集票マシンとなることと引き換えに地方農村に利益を還元してきたシステムの破綻を意味した。2016/06/18
かんがく
13
犯罪者(永山則夫、宮崎勤、酒鬼薔薇聖斗)、テロ組織(連合赤軍、オウム)、店舗(コンビニ、パルコ、ロードサイド)など様々な尺度から、60〜00年代の日本社会の変容を見る。国際化と新自由主義が進む一方で、地方や家族の崩壊が進む。少し古い本だが、現代もこの延長として捉えられる。2021/02/25
fseigojp
13
1970年を境に、実用より見た目が重視され、実態経済が大きく変わっていく2020/12/13
chang_ume
7
2009年刊。後期近代の時代区分理解をまずは動機に読みました。しかしよくまとめられたなと。同時代史として超人的な整理です。「理想」から「虚構」へ、さらにそれ自体の崩壊がつづられた内容。著者得意の象徴的解釈ですが、たとえば「ひきこもり」については、心理的状況もさることながら、やはり現状では「貧困」の延長に捉えるべきでは。本書刊行時よりもさらに、2018年現在は問題が先鋭化している。無論、その後の展開として「反貧困運動」など、連帯あるいはマルチチュードといった「ネットワーク」も多数生まれましたが…。2018/05/28