内容説明
多彩な言論や社会運動が花開き、政党内閣の成立へと結実した大正デモクラシーの時代。それは、植民地支配が展開する時代でもあった。帝国のもとでの「民衆」の動きは、どんな可能性と限界をはらんでいたか。日比谷焼打ち事件から大正政変、米騒動、普通選挙の実施、そして満州事変前夜に至る二五年の歩みを、「社会」を主人公にして描く。
目次
第1章 民本主義と都市民衆
第2章 第一次世界大戦と社会の変容
第3章 米騒動・政党政治・改造の運動
第4章 植民地の光景
第5章 モダニズムの社会空間
第6章 恐慌下の既成政党と無産勢力
著者等紹介
成田龍一[ナリタリュウイチ]
1951年大阪市に生まれる。1983年早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。文学博士(史学)。専攻、日本近現代史。日本女子大学人間社会学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
19
麻生副首相の失言で、デモクラシーの意味が問われる昨今。第一次大戦、いざこざ、戦闘の時代。地域秩序の担い手が運動者となり、根幹から立ち起こる運動(14頁)。上層商工業者は廃税運動を展開。上層でも危機に陥っていた社会的には壊滅寸前だったのか。追い込まれないと運動しない国民性なのか。吉野作造は、人民の利福、意嚮ということばで民本を位置づけようとした(28頁)。この時代の労働時間は、半日以上(63頁)。『女工哀史』である。河上肇『貧乏物語』(64頁~)。社会の大病なのだ。上田自由大学は長野大学紀要にあった模様。2013/08/01
yamahiko
18
力をつけた民衆の動向が歴史のターニングポイントにおいてどのように影響したか、改めて知ることができた。ただ、記述に少し荒い印象を持った。2017/04/07
coolflat
16
日露戦争後の1905年から1931年の満州事変前夜までの歴史。この時期は「大正デモクラシー」と呼ばれ、政党政治が実現し、社会運動が展開した時期として扱われている。1925年の『普選ー治安維持法体制』について。選挙権の付与により人々を『国民』として自覚させ、主体的に国家との一体化を促し、それに従わない者を排除。統合(普選)と排除(治安維持法)により選別的に「国民化」を図る。帝国の政策に批判的な人々に対し、参加し妥協しながら部分的な批判をするか、排除されながら全面的・原理的な批判をするかという難しい選択を迫る2015/12/22
長谷川透
9
大正の時代は短くも激動の時代である。本書は大正デモクラシーを軸に、大正の時代の出来事をコンパクトにまとめてあり、要所を押さえるだけであるのならば最適な書と言えるかもしれない。しかし読み物としては些か退屈で、大正時代のダイナミズムが全く伝わってこない。読み進めても一向に流れに乗り切れない。大して頁数がない本にも関らず何度も読書を中断し、読了までに数日間かかってしまった。とは言えこれらの不満は本書の文体に向けられたもので、構成や時代を切り込む視線に対して向けられたものではない。ただ面白みに欠けるだけである。2013/04/25
kenitirokikuti
8
図書館にて▲2023年の関東大震災から100年 のあれこれを学ぶため再読▲刊行は2007年刊行で、第一次安倍内閣のとき。民由合併から民主集中制政権誕生への前夜であった。今読むと行間にそういうムードを嗅ぐ▲「人民」ないし「民衆」に視点を置くと、自由民権運動も大正デモクラシーもモナーキーに圧殺されてゆくと括られるが、それはそれで社会運動と密過ぎる見解だよなぁ、というのが遠くなった過去への率直な感覚。あといくつか大正ものを借りる予定…2023/01/31