出版社内容情報
「山の人生」に描かれた山人や「海南小記」の漂海民.黒潮にのって北上した「海上の道」の人々や遠野の伝承….永年の踏査と論考をまじえ,巨人・柳田の学問を丹念に跡づけながら,その鋭さと広がりを新たな切り口から捉え直す.
内容説明
『山の人生』に描かれた貧しい山民や漂泊民サンカ。『遠野物語』の伝承や『海南小記』の漂海民たち。『海上の道』に登場する黒潮にのって稲作文化ともに北上した人々。さらに古琉球の民俗、常世の国考…。巨人・柳田の学問を丹念にあとづけながら、著者自らの長年の踏査と論考をまじえ、柳田民俗学の鋭さと広がりを新たな切り口から捉え直す。
目次
第1章 山の漂泊民
第2章 山人論の運命
第3章 漂海民と孤島苦
第4章 『海上の道』考
第5章 稲の嬰児
第6章 稲作一元論をめぐって
第7章 海彼の他界
第8章 日本人の学
著者等紹介
谷川健一[タニガワケンイチ]
1921年熊本県に生まれる。東京大学文学部卒業。専攻は民俗学。現在、日本地名研究所所長
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感想・レビュー
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うえ
7
「多良間島はまわりは海に囲まれているが、島の漁業は…まったくふるわず、戦前の島民は…水納島の漁民から魚を買って食べる習慣だった…柳田の話にも出てくる水納島は…風波が荒く、冬場の二ヶ月近くは、多良間島との間の交通が完全に途絶してしまう…漁にも出られず、食物が尽きて、毎日夕方になると、海岸に出て貝や海藻を拾って飢えを凌いだという」「新城島…では雨の降らない日がつづくとたちまち水飢饉に陥り、島民の間で飲料水の一升借り…がおこなわれた…それが尽きると、荒海を越えて西表島の…仲間川の水を汲みにいかねばならなかった」2019/02/07
マーブル
7
柳田を尊敬しながらも、その誤りと思える部分ははっきりと述べる姿勢は好感が持てる。内容の正否は分からずとも、民俗学と言う学問の証明の難しさは強く感じることができた。あまり多くのデータが集まらない時点では、学説は「想像」に限りなく近く、学者の思い込みや希望にねじ曲げられ易い。 後世で証拠が積み重なった後では、こじ付けに思えるような説があったとしても仕方ないように思えてくる。2018/11/02
iwasabi47
4
柳田の思想の概説だけでなく対論や人物にも注意払われている。特に一国主義への関心の持ち方とその破綻を『アナキスト民俗学』の論旨を理解するのに良かった。序章の『山の人生』に出てくる話の顛末もいい。2018/07/20
暗頭明
4
第一章が強烈で目が離せなくなる。著者が編集者だったことを思い出す。『山の人生』の冒頭で語られる「山に埋もれたる人生のある事」の背景・後日譚が紹介されているのだ。この種の驚きは、『日本の弓術』を読み沈思するところに、『禅という名の日本丸 』で水をぶっ掛けられるような経験をするのと似てなくもない。ともにややジャーナリスティックではあるが - 西谷修なら「どぶ浚い」というだろうか(『不死のワンダーランド』) - 面白いことには面白い。2015/01/15
ダイキ
2
「私たちが柳田にひきつけられるのは、その滾々と溢れ出す豊かなイメージが私たちに日本人としての幸福を約束するからである。柳田の著作に触れるときいつも訪れる充実感と解放感。柳田をよむ前とそのあとでは、日本人の幸福に対する自信といったものがちがう、と私は思っている。柳田の民俗学、それは「日本人の誇りの学」と云うことができる。」(はじめに)2024/08/31




