出版社内容情報
日本の前方後円墳,秦の始皇陵,そしてエジプトのピラミッド.「王陵」は,古代社会の遺産として今も人々の心を惹きつけてやまない.世界各地の王陵を概観し,この巨大モニュメントが登場する社会的背景を明らかにする.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
浅香山三郎
14
王陵といふ存在を、例へば日本の古墳といふ一国を対象としたものだけに拘らずに、世界史的に見て、様々な王の墓(陵)のありやうを比較してみてはだうか。さういふ関心から、日本・中国・エジプト・ヨーロッパの各地に材料を得て、それらの共通点を探つてゐる。国家の形成期に巨大な王陵が造られるとか、王の神格化、殉葬と犠牲、権力の維持・継承装置としての役割等、比較史的な方法を使つての指摘は面白い。第7章「王陵のイデオロギー」は、近代天皇の確立と天皇陵の整備といふ天皇陵問題に繋がる指摘としても興味深い。2019/08/11
Akiro OUED
3
巨大王陵を築造するために、近所に労働者が暮らす都市ができた。逆じゃないか?人を集めて働かせて、支配者は、より多くの富を手に入れる。こっちが狙いで、墓を築くことはオマケだったのかも。国が富み、民も豊かになると、墓造りなんかに汗かくヤツもいなくなった、てのが実情だったのかもね。2021/07/20
hyena_no_papa
2
2021/2/14、久々に再読。著者は考古学者で、日本古代史でおなじみ。古代史と言えば、ついつい日本国内に視野が限られるきらいもあるが、逆に世界に目を拡げ、独自の「王陵」の定義に基づき、太古から近現代までの「王陵」について考察する。〝邪馬台国はどこだ!〟と血眼になっている向きには、この本を手に取れば、古代史への関心レベルは維持したまま、また新たな視野が広がること請け合いである。箸墓に始まり仁徳陵で盛期を迎える巨大古墳の時代や、神武陵の治定の経緯など日本古代史を考える上でも大いに参考になるだろう。好著!2006/06/24
霹靂火 雷公
2
古代における古墳から近現代における指導者のモニュメントまで、幅広い地域と時代における「社会的に大きな影響力をもった英雄や権力者を葬り祭る巨大な記念物」としての「王陵」を眺めるための入門書。あらゆる分野で「比較する」ことの意味を再考させられる良著でもあります。2016/05/30
Takashi
2
十数年ぶりの再読。短い文章の中に、さまざまな思想や情報が内包されている文章。そして、とてもわかりやすい。世界の王陵の比較研究から、巨大な王陵出現が初期国家段階に出現し、それが殉葬などを含むこと、官僚制が確固たるものとなるにしたがって巨大な王陵は重視されなくなることなど、王陵からみた世界史が立ち上ってくる。名著。2014/03/16