出版社内容情報
干潟・砂浜・サンゴ礁….美しく豊かな渚の自然が,いま急速に失われようとしている.日本各地の海岸を歩いた生態学者が,渚の原風景をたどりつつ,その生態系システムと機能,生物多様性を解き明かし,渚の保護をよびかける.
内容説明
干潟・砂浜・サンゴ礁…。日本列島を美しくふちどり、豊かな自然をはぐくんできた渚が、いま急速に失われようとしている。北海道から琉球列島まで、全国各地の海岸をたずね歩いた生態学者が、かつて人々の心のうちに映じていた渚の原風景を描きつつ、その生態系と機能、生物多様性を説きあかし、渚の保護をよびかける。
目次
序 海やまのあいだ
1 河口―川と海が出合う場所
2 干潟―満ち引きする大地
3 藻場―海の中の草原
4 砂浜―波が寄せる岸辺
5 サンゴ礁―光合成共生の海
6 ヒルギ林―海に浮かぶ森
7 渚の保護のために
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
78
海に囲まれている日本は様々な渚と昔から関わりが深かった。河口、干潟、藻場、砂浜、サンゴ礁、ヒルギ林。その渚が現在どんどん減少しているか開発や環境汚染で崩壊しつつある。身近な海を観察しても沖合には消波ブロック、砂浜と海の間には護岸工事が、そしてさまざまな汚染による環境破壊。古代の文献を引用した日本の渚の素晴らしさ、そこで生息する生物の多様性が図版とともに紹介されている。読んでいくうちに日本の渚を守ろうとするにはもう遅い時期にきているような気がした。残念なことだ。図書館本2018/07/11
うっきー
8
海辺の生態が分かりやすいだけでなく、描写が文学的で美しかったです。 読みながら、いままでに自分が貝殻拾いをしながら出掛けた砂浜と、貝の記録をきちんとつけたくなりました。2015/12/08
かもすぱ
4
古本祭りで3冊100円で入手したもの。日本の渚(干潟・砂浜・サンゴ礁など)が失われゆくなかで、渚は日本人に何を与え、何を失うのか。万葉集からの引用をはじめ、日本人がどのように渚と関わってきたかという民族学方面からのアプローチと、渚のもつ機能や生物相について自然科学方面からのアプローチが高い水準で融合してすごく面白かった。各章の導入ではそれぞれの渚の特徴や情景をめちゃめちゃ文学的に表現していたのも好みです。でも「自然は絶対守れ、産業と開発は悪」と感じられる主張もあった。海無し県出身なので川と湖のも読みたい。2017/10/31
ひろただでござる
3
資源を持たない日本は海岸線をコンクリートで固めて経済発展に勤しむしかなかった。どこにでもあった自然と引き換えにした実利で望むものを手に入れたとき、失った物の価値の大きさに気がついたが一旦動き出したことはそう簡単には止められない。干潟や渚や湿原を目にすることのない子どもたちが増えていく時、生態学的・生物学的生物多様性とか資源や環境を保護する為などが自然を残す理由(そのためだけにに残すの?)になるのではと思ってしまう。著者の「渚愛」が凄い。2018/10/14
田楽
2
海と陸の境である渚を7つの類型に分け、和歌の引用などを用いた文化面の解説と、渚に住む生物や生態系へ及ぼす機能面の解説が同時にされている。渚の保護を強く訴える内容で危機感を強くしたが、災害の多い日本において自然そのままの状態が正義であるとは思えないので保護と開発のバランスは難しい問題だと感じた。2024/09/14