出版社内容情報
前70年,帰任したシチリア総督がローマの法廷でその悪政を裁かれた.収賄,脱税,不当な裁判,そして過酷な課税下に荒廃してゆく農業,横行する悪徳徴税人,財産を狙われる名望家たち-.総督の強欲を追及する弁論家キケロの弾劾演説を史料に,ローマ統治下にあることの現実を探り,支配の構造を浮き彫りにする.
内容説明
前70年、帰任したシチリア総督がローマの法廷でその悪政を裁かれた。収賄、脱税、不当な裁判、そして苛酷な課税の下に荒廃してゆく農業、横行する悪徳徴税人、財産を狙われる名望家たち―。総督の強欲を追及する弁論家キケロの弾劾演説を史料に、ローマ統治下にあることの現実を探り、支配の構造を浮き彫りにする。
目次
序章 シチリアの悪総督
1 総督は惜しみなく奪う
2 ローマと属州―強大な権力を支えたもの
3 徴税の甘い汁―総督と農事家たち
4 支配者の言説
5 波乱の前70年
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
俊
24
共和制ローマ時代、シチリア総督ウェレスに対して行われたキケロの弾劾演説の記録からローマ支配の実像を読み解く。美化されがちな古代ローマ時代だけれど、他の時代同様、贈収賄、略奪、横領、脱税など様々な不正、権力の濫用が支配者階級間では行われていた。また、統治のシステムも総督の権力が異常に大きかったり、人事もコネと人脈が猛威を振るっていたりで、想像以上に不備がある印象を受けた。後世に讃えられるような時代であっても、そこで生きる庶民の暮らしはやはり厳しかったようだ。2014/10/14
wei xian tiang
4
ウェレスが属州そこかしこにに自らの銅像を建立させたのは、彼一人の名誉欲云々というよりも、ローマ支配を人格的に表現するのが、皇帝なる者が影も形もない時代、総督という形でしかありえなかったからとしか思えないのだが…2015/12/06
TMHR ODR
3
★×3。紀元前70年まで3年間、シチリア属州総督を務めたウェレスの悪政と、裁判で彼を訴追したキケロの演説を中心とした、すげー狭い範囲の話。でも、当時のシチリア、ローマ属州の統治のあり方、徴税はどのように行っていたか、裁判はどう行われていたか、公私の人間関係のあり方など、通史的な読み物では数行で済ませそうな事柄について背景や幾つかの見方を提示したりしていて面白い。2016/07/14
greenman
3
前回読んだ「なぜローマは滅んだか」にも出てくる、ウェレスのシチリア島の収奪と、それを糾弾するキケロとのローマ法廷での対峙を中心として、その時代(BC70-50)のローマ帝国(この頃はまだ共和国と名乗っていた)のありかたについて書かれている。その現実は当時のあたりまえの現実で、賄賂による陪審員の工作など生臭いことが耐えない。一方でキケロは現代までも認められるなるほどと思わせるレトリックを使っていて、キケロ、そしてカエサルという優れた人物がこの時代に誕生したことはローマという国を新しく作り上げたのだと思う。2013/07/29
wisewise
2
ローマの実像、影を知る。塩野七海のような光の面から見たローマ賛歌とはまた違う。帝国の維持には色々見方があると思う。2012/11/11
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