出版社内容情報
臓器移植や原子力など,高度化・専門化へと突き進む科学技術.われわれがその受益者とも被害者ともなりうる科学技術はどうあるべきなのか.科学の歴史を跡づけてその本質を解き明かし新たな科学技術像を提示する.
内容説明
臓器移植や原子力など、科学技術が高度化・専門化へと突き進むなか、その意味があらためて問い直されている。いま求められているのは、西欧近代科学が成立した十七世紀以来、また日本でいえば本格的近代化が始まった明治維新以来の抜本的転換ではないのか。気鋭の科学史家が、二十一世紀のための新しい総合的科学技術像を提起する。
目次
第1章 近代日本の科学技術の性格
第2章 西欧近代科学の特性と発展
第3章 技術とはなにか、それは科学とどう関係するか?
第4章 数学・自然科学・医学―科学の三つの典型
第5章 転換期の現代科学技術
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
30
入門書かと思うと痛い目に遭う、それくらい難解。日本人が近代どのように科学を受け入れてきたか、そもそも科学とは何を示すのかという定義はなるほどと思わされた。2014/07/01
ひと
10
タイトルには入門とありますが、話が散らかり過ぎていて、この本で入門するのは難しいです。初学者にはまず俯瞰的な視点を、という意図があったのかもしれませんが、地図にするには秩序に欠け、辞書にするには心もとなく、筆者の政治的主張は至る所に顔を出すが思想対決の相手として機能する程度の個別の問題への執着した論述があるわけでもなく、新しく得られたことは少ないです。実は、この本は、読者を入門させるために書いたものではなく、筆者が入門するために、科学論に対する考えを纏め姿勢を築く意図で書いた自分用メモなのかもしれません。2017/12/06
けいすけ
3
ちょっと自分の興味がある分野とずれてたので途中リタイア😅2019/07/10
オランジーナ@
3
一年ぶりに再読してみると中々理解できるようになった。フォンノイマンがひどい言われようなので気になった。2015/09/16
茶幸才斎
3
科学技術発達の方向性は、背景にある人間の社会構造が決めているのだ、と鋭い指摘をしている本。その上で、脳死移植医療や原子力技術の問題点に警鐘を鳴らし、科学技術のあるべき姿を近代看護学が到達した人を慈しむ規範的態度に見出し、環境問題への注力が目下の急務と訴える。技術の発展は、我々の生活者としての日々の幸福を願う自然な感覚からではなく、政治体制や産業資本の要求に対する従属の産物だ、という主張が重く響く。今日、我が国の原子力政策や北朝鮮のミサイル技術躍進のニュースに、そのことの象徴的な意味を強く感じずにおれない。2012/12/13