出版社内容情報
近代経済学はどのような価値観,社会像にもとづいて形成されたのか.ワルラス,シュンペーター,ケインズ,ヒックスらの描いたビジョンを検討するとともに,壮大な理論体系の構築をめざしたマルクス,ウェーバーらの思想をも根底から問い直す.現代社会の激しい変貌を見すえつつ従来の通説にとらわれずに展開する,創見に満ちた経済学観.
内容説明
近代経済学はどのような価値観、社会像にもとづいて形成されたのか。ワルラス、シュンペーター、ケインズ、ヒックスらの描いたビジョンを検討するとともに、壮大な理論体系の構築をめざしたマルクス、ウェーバーらの思想をも根底から問い直す。現代社会の厳しい変貌を見すえつつ従来の通説にとらわれずに展開する、創見に満ちた経済学観。
目次
序章 近代経済学私観
第1部 ビジョンと理論―市場の多様化と価格機能(リカード;ワルラス;シュンペーター;ヒックス;高田保馬;ヴィクセル)
第2部 ビジョンの充実―経済学と社会学の総合(マルクス;ウェーバー;シュンペーター;パレート)
第3部 パラダイムの転換―自由放任から修正主義へ(フォン・ミーゼス;ケインズ)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Francis
13
もっと長生きしていれば日本人最初のノーベル経済学賞を自称できたといわれる森嶋通夫先生の経済学史書。普通の経済学史とは異なり、リカードウからケインズまでの経済学者の思想を掘り下げ、森嶋先生独自の視点から読み解いているのが新鮮。「供給が需要を作り出す。」といういわゆるセイの法則がいかに経済学をゆがめたか、そして反セイの法則はどのようにして経済学に取り入れられるようになったかについて一貫した考察を行っている。2017/07/20
はるわか
12
リカード:分配と成長の一般均衡理論。ワルラス:価値自由、大衆間の完全競争。シュンペーター:エリート主義の経済学、エリートの転進。ヒックス:市場の類型学。高田保馬:人口と勢力。ヴィクセル:資本理論と人口。マルクス:経済学的歴史分析。ウェーバー:合理的行動の社会学、倫理と経済、私企業官僚制。パレート:脱合理的行動の社会学、エリート層内の興亡。フォン・ミーゼス:自由放任の予定調和、社会主義と価格機構。ケインズ:新ヨーロッパの構造、セイ法則の清算。2018/11/24
KAZOO
10
独特の経済学史観を持っておられる森嶋先生の簡潔な経済学史です。これを読まれる方は、一般的な経済学説の本をまず読んでからのほうがいいと感じます。11人の経済学者を選ばれて論評されていますが、高田保馬先生も入っていたりケネーやJ.S.ミルがなかったりします。リカード、シュムペーター、マルクス、ケインズに力が入っています。2014/03/04
Z
8
良書。11名を取り上げる経済学史。リカード、マルサスに触れつつレンタル市場がある商品においては均衡価格が存在しないことを指摘。レンタル市場があるということは商品が耐久消費財であるということであり生産面でも消費面でもそれに依存する工業社会はそれ以前とは質的に異なる。著者はその転換を第一次対戦の頃と見ているが、需要と供給が一致した点であらゆる商品(労働力も含む)が適性価格に推移し過剰生産もなく非自発的失業者もでない(新)古典派の経済学を否定。ケインズが古典派の経済モデルが現実に適応していないという点を認識した2022/02/10
Z
5
たことを評価。ケインズは現実の経済は需要と供給に基づいた価格調整メカニズムが働かず、過剰在庫→生産縮小→労働者の整理で失業が起こるので、デフレ期は政府が財政政策を行い雇用を創出しましょうというものだが経済状況(下部構造)に応じた、政府の(上部構造)の働きは資本主義に不可欠であり、政治、社会学と経済学を総合しようとした経済学、社会学者を紹介する。2022/02/10